大熊町民話シリーズ第2号 民話 野がみの里 - 005/056page
《第三話》
又さんのそろばん (下野上北向)
下野上の里に又三という若者が住んでいました。この里には昔から山神講という若者たちの集まりがあります。それは毎年正月元日に催され、朝もモチ、昼もモチ、夜もモチを食べなければなりません。そのモチをたべながら一年中の人足勘定をするのです。
若い人たちは買物、モチつき、魚やき、オニシメつくり。なかなか忙しいのでした。これは男の集まりですので仕事はみんな男だけでやるのです。
それにもまして大変なのは人足勘定です。誰は出不足何日、彼は超過何日、それを計算して過不足なくするのが役員達の仕事なのです。
ある年のことです。どうしたことか計算がさっぱりあいません。クサクサしていた役員が大きな声でどなりました。
「マターたいくつそうだな。おれにたばこ買って来い。」又三は歩いてマサタチという店まで行ってタバコを買って来ました。半里はあります。もう出来ただろうと思ってのぞいて見ますと、まだ。パチ、パチとやっています。タバコを出すと、もう一人の役員が俺のも買って来いと命じま