大熊町民話シリーズ第2号 民話 野がみの里 - 006/056page
した。どうせたのむなら一緒にたのんでくれればいいのにと思っても仕方ありません。
みんなは餅はかたくなってしまう。汁もさめてしまったと心配しています。又三は帰って煙草を出してみると、まだパチ、パチ。「まだですか。」又三はとうとう言っていけないことを言ってしまいました。
「ナニ又、よくもいったナ。そんなら貴様やれ。もう晩いんだ。半時内にやれよ。」
これはしまったと思ったが仕方ありません。又三はソロバンをとりました。又三のソロバンは休むことがありません。パチパチパチパチ、その見事さ、みんなびっくりしてしまいました。与えられた時間内に又三は実に見事にやってのけました。
今まで「又」とか「又三」とか呼びすてにされた又三はそれから又さんと呼ばれるようになりました。そしてぜひ子供達にソロバンを教えてくれとたのまれてソロバン塾を開き先生になりました。
部落の人々に「又さんのソロバンは沖を走る船をとめる」とほめられました。