大熊町民話シリーズ第2号 民話 野がみの里 - 007/056page

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 《第四話》

  甚助の伊勢詣り (大川原)

むかしむかし、大川原の里に甚助(じんすけ)と弥吉(やきち)という金持ちが住んでいました。ある年大きな山の境のことで争いとなり殿様に訴え出ました。殿様は二人をよんで話を聞き、とり調べの結果、弥吉と山ときまりました。甚助は悪者というわけで入牢を申しつけられました。

昔の入牢はつらいもので、食べものは麦ばかりのごはんに塩をつけたおにぎりくらいのものでした。それに全然運動もしませんから、食欲もないので大てい二・三年で牢死しました。村の人たちはこれを牢ぐされといいました。

甚助はこの話を聞いていましたので何としても死んではいけない。そのために運動しよう。いろいろ考えた末、伊勢詣(いせまいり)りをすることにしました。甚助は前に伊勢詣りをしたことがあるので、大へん役にたちました。まず距離を考えました。

江戸まで七十里、江戸から伊勢まで百里、合計百七十里、急ぐ旅でもないので、一日三里としました。すると片道五十七日、二ヵ月かかる。往復四ヵ月、一年に三回できます。

甚助はその日から伊勢詣りをはじめました。牢番も別に悪いことでもないのでだまって見てい


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