大熊町民話シリーズ第2号 民話 野がみの里 - 008/056page
ました。この運動によって食事も大へんおいしくなりました。
こうして七度、伊勢詣りをした甚助は健康で牢屋を出ることができました。そして熊川の遍照寺(へんしょうじ)で仏(ほとけ)に仕(つか)え、余生を安楽に送りました。
《第五話》
百姓三太郎 (下野上)
三太郎はこの地に来てまだ三年しかたっていない百姓である。荒れた田を開いたが水は思うようにかからない。隣の田にはいつも一ぱい入っている。それは士(さむららい)、吉田五左工門の田である。三太郎がたんぼに出ると五左工門の居候(いそうろう)がすぐとんでくる。しかたなく三太郎は真夜中に起きて水をかけるのだが、あまり水は入らなかった。
今年はひでりで五左工門の田にも水は一ぱい入っていなかった。三太郎はなるべく人にあわないようにして水かけをしていた。夕方であった。五左工門が三太郎の家を訪ねて来た。
「三太はいたか。」