大熊町民話シリーズ第2号 民話 野がみの里 - 013/056page
五町程もどると、浜辺に出る道があった。余り広くもない砂浜を通って無事いわきの国に入った。三十分程歩いて一休みした。みんな勿来の関の方に手を合わせて拝んだ。
「関守さま、ありがとうございました。私たちは相馬の国で必ず成功してみせます。たとえどんなにつらくとも。」
彼等一行は下野上北向の里に居を構えた。
《第七話》
貞蔵のつつみ (下野上)
下野上の村はずれに七軒の人々が住んでいた。田はつくっても水はなかなか流れてこなかった。
これをあわれに思われた殿様は一山向うにつつみをつくってくれた。七軒の人々は安心して田をつくることができるようになった。つつみの土手には草や木が生えた。田植えがすむと、七人の若者は土手の刈り払いにでかけた。この日は朝から暑かった。疲れた彼等は早目に昼食をとった。大きなエゴ(昔の弁当箱)に一