大熊町民話シリーズ第2号 民話 野がみの里 - 014/056page
ぱいつめた麦飯をおいしそうにたべていた。食べ終った貞蔵はいった。
「早く飯食って水あびねえか。」
「このつつみすりばちだぞ。」
「何だ、おっかねえのか。」
「めし食ったばっかりだし。」
「いいよ。おれひとりであびっからみてろ。」
彼は泳ぎつ、もぐりつ得意気にふるまった。
岸の六人もはじめはみていたが、そのうち木かげで昼寝したり、話し合ったりしていた。すると、
「めんめんするわい、アッハッハー。」
「めんめんするわい、アッハッハー。」
と大声をたてた。
もともとひょうきんな貞蔵、またはじまったなと思っているうち浮かんでこなくなった。
これは大変と思ったが、この深いつつみ、誰も助けようとしない。しかしこのままにおくわけにはいかない。一番おとなしい嘉兵衛がいった。