大熊町民話シリーズ第2号 民話 野がみの里 - 016/056page

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 《第八話》

  坊一さま (夫沢中央台)

むかし。

郡山(双葉町)は大へん栄えた町で、何百軒もの家々が立ち並んでいました。この町に万福寺というりっぱなお寺がありました。そしてお山から坊一という坊さんが来て、みんなから信頼されておりました。

ある夜、『一人旅の女がこの寺を訪れて参りました。坊一は一目みてびっくりしました。

「お前はどうしてここへ。」

「お聞き下さい。私はあなたがお山で修行中、できるだけのことをしてあげました。たとえ遊女でも心が清ければというあなたのことばを信じて幸せを感じておりましたのに、あなたは五年前、私に一言もいわずに行方知れずになってしまいました。あれから私はあなたの行方を探しました。その間に何回か死を思いましたが念願かなって、今夜やっと探しあてたのです。」

「一寸まって、私は僧です。」


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