大熊町民話シリーズ第2号 民話 野がみの里 - 021/056page

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 《第十話》

  サユシュ様 (下野上)

下野上の部落は昔二十五戸の百姓が住んでいましたが、天明の飢饉で餓死したり、他国へ逃げたりして無人の里になってしまいました。

しかしその後殿様は他国から人々をよんで土地を作らせたので、追々人々が住むようになりました。

ここに来たのは多くは雪国の人々でした。ふるさとの冬は雪が多く一歩も外に出ることができないのに、ここは一年中仕事が出来るといって喜びました。

この里に一人の坊さんが住んでいました。村の人々はサユシュ様と呼んで尊敬していました。

遠い遠い他国から来た人々は見知らぬこの里で暮らすのは大へん辛い、そして淋しいことでした。

サユシュ様はこれらの人々の中に入って、仕事を手伝ったり、仏様の話をしてくれたりしました。里の人々は信心のあつい人たちでしたのでお経は大てい暗誦していました。

サユシュ様は毎月十日ごと宿をきめてそこに集まり、お経をあげ、そして説教を聞かせてくれ


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