大熊町民話シリーズ第2号 民話 野がみの里 - 022/056page
ました。
移民たちは朝は暗いうちに起きて仕事をし、夕方は暗くなるまで働きました。しかしお勤めは一日も欠かしたことはありません。
ただ残念なことはお寺のないことでした。どうかしてこの里にもお寺がほしい。そしてサユシュ様を一日も早く御院丈さまにしてあげたいと思いました。
しかし下野上、大和久、長者原の信者全部集めても三十戸にもなりません。一寺を保つには百戸はほしいのです。そのためにはもっともっと移民を募集しなくてはと誰もが考えるのでした。
サユシュ様は加賀(富山県)のお寺の三男に生まれました。加賀の国は人間が多すぎて仕事がないのでした。お寺をもつなどとうていできません。相馬には多くの移民が来ているのでその仲間にまじってこの里にやって来たのでした。
里人たちはある目集まってお寺を建てる相談をしました。お寺は焼山の東はじの岡の上、ここは下野上の里はもちろん、大和久、長者原までよく見えます。鐘の音は里の隅々まで聞こえることでしょう。
一番問題になる移民募集はサユシュ様が国に帰ってできるだけつれて来ることになりました。しかし人々は心配でした。余り加賀の国から人が逃げだしたので、この頃は移民は大へんむずか