大熊町民話シリーズ第2号 民話 野がみの里 - 024/056page
《第十一話》
金谷きつね (下野上)
金谷の森にはきつねが住んでいました。いや今でも住んでいるのです。このきつね、人を馬鹿にすることが上手で、何人もばかにされました。
金谷の森は昼なお暗い所です。その真ん中に一本の道が通っていて、里の人はどうしてもこの道を通らなければなりません。星の出ている晩上を仰ぐと一すじの空が見えるのですが、真っ暗な晩など村人でも通るのが大へんな所です。この森にすむきつねが、人をばかにするのです。
寒い寒い師走の晩でした。治郎助はどうしてもこの道を通らなければなりません。きつねなどへえちゃらだ。でてきたらこの縄で首をしめてやるそとぶつぶついいながら一本道を進みました。
森の中程まで来ると道はなくなってしまいました。こんなはずはないと思ってもさっばりわかりません。彼は困ってじっと立ちすくんでいました。すると向うに一点の赤い火が見えました。あそこへ行けば何とかなるだろうと思ってずんずん進んでも一向火の近くには行けません。時々木の切株につまづいて転んでしまいます。治郎助は途方にくれてしまいました。そのくらやみの