大熊町民話シリーズ第2号 民話 野がみの里 - 025/056page
中に女の声が聞こえて来ました。
「治郎助さん、さぞお困りでしょう。」
「あなたはどなた。」
「あら、お忘れになったの、それいつか一しょに酒を呑んだ女。思い出したでしょ。」
治郎助は思い出せなかったが、「ああわかった。わかった。よく助けてくれた。ありがとう、又のみにゆくよ。」
「ほんとね。では私についてらっしゃい。」
といって森を出ました。すると一軒の家がありました。火が赤々ともえていました。
疲れと安心で治郎助は眠ってしまいました。
あしたの朝、目をさましてみてびっくりしました。家と思ったのは土手の中で、そこは焼場(火葬場)でした。焼けたワラ火が赤く輝いていました。