大熊町民話シリーズ第2号 民話 野がみの里 - 028/056page

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 《第十三話》

  丹蔵と長い刀 (大川原)

むかし。

大川原の里に丹蔵という侍が住んでいました。大川原は相馬の国の南の境でしたので侍だけのへんぴな村でした。その侍たちは田を耕し、畑をつくり、馬を飼っていました。しかし月に何回かは調練原で馬術をねり、講武所で武術をみがくのでした。

丹蔵の家には先祖伝来の大きな甘柿があり、秋になると、たくさんの柿の実が色づきました。丹蔵はその柿を殿様にあげるため毎年中村の町(相馬市)にゆくのを楽しみにしていました。

大きくて甘そうな柿をたくさんとって、その中から特上のものを家来に持たせてゆくのでした。

丹蔵は侍にしては小柄の方でしたが、長刀が好きでした。遠くから見ると大刀をひきずって歩いているように見えました。

中村までは十三里(五十ニキロ)朝早く出ても、つるべおとしの秋のことですからつくのはタ方になります。丹蔵は無事柿を殿様にさし上げました。殿様からはごほうびをいただきました。

丹蔵たちは中村の親戚に一夜をあかし、翌朝弁当と新しいわらじをもらって家路をいそぎまし


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