大熊町民話シリーズ第2号 民話 野がみの里 - 039/056page
《第十九話》
大川原を救った三人の青年 (大川原)
今から一一二年前。
この大熊の地は戊辰(ぼしん)戦争の戦場となってしまった。熊町も野上も焼かれた。その時大川原は一軒も焼けず、三つの倉庫に一ぱい入っていた米もそのまま残った。この大川原を戦禍(せんか)から救ったのは三人の青年だった。
相馬藩にとっては藩をあげての一大事、武士は全部戦場に向ったので、残ったのは女と子供と老人、それに僅かの青年だった。
慶応(けいおう)四年七月二十八日朝、上手岡平道地(かみちゅかへいどうち)(今変電所のある附近)で相馬の兵と官軍との間で戦争が展開された。相馬軍は野原の中なので思うように戦うことができないので、大川原を通って野上にひきあげた。大川原の人々は大へん。三人の青年は女、子ども、老人を坂下の方に逃げさせた。
しかしこのままだと官軍が追いかけて来て部落に火をつけてしまうだろう。三人は相談して上手岡に向った。名主渡辺様は心のやさしい人だ。