大熊町民話シリーズ第2号 民話 野がみの里 - 040/056page
三人は裏道をいそいで名主の家にいった。官軍は部落の所々に休んでいる。
「名主様、たのみがございます。」
「何だ。」
「わっしら、大川原を何とか守りたいと思って。」
「どうしろというのだ。」
「ハイ、アノニ・三日前からの雨で大川原川も野上川も大へん水が出ています。だから官軍が大川原を通って野上にゆくのはむりだと。」
「そうか、わかった。できるかどうかはわからんが、やってみよう。」
三人は急いで大川原に帰った。そしてどろぼうに入られないように見張りをした。
官軍は夜の森に出て新田原(西願寺附近)で仙台兵を破った。負けた仙台兵は熊町に火をつけて一軒残らず焼いてしまった。
しかし大川原は助かった。青年の名は清太、覚右エ門、杢右エ門といった。