大熊町民話シリーズ第2号 民話 野がみの里 - 045/056page
家族が病気したり、火事にあったりして貧之な暮らしをしていました。近所の人々は大へん気の毒に思って、丹蔵を慰めたり、仕事の手伝いをしたりしてあげました。
しかし丹蔵は、ひとの世話になるのは男の恥、何とか人並の生活ができるようにと、毎夜山の神様におまいりをしていました。
ある夜、神様がまくらもとにあらわれて丹蔵に申しました。
「お前は正直者でよく働く。まことに感心である。よってごほうびをとらせよう。」と。
丹蔵は眼をさましました。しかしどこにもごほうびはありません。夢なんだなと思いました。
その日は朝から雨が降っていました。何気なく、丹蔵は傘をさして外に出ました。つい先年火事で焼けてしまった土蔵跡に立って、ありし日を偲(しの)んでいました。ところが足もとに金色に光るものが見えました。拾ってみると一枚の小判でした。丹蔵は誰にも話さず、竹でつくった筒の中に入れ神棚にあげておきました。
丹蔵は毎朝この土蔵跡に立ちました。不思議なことに、天気のよい日は小判は見つからず、雨の日には拾うことができました。
いつの間にか丹蔵のおくさんは主人の秘密を知ってしまいました。主人の留守中に神棚の竹の筒(つつ)を手にとってびっくりしました。ぴかぴか光る小判が五十数枚入っておりました。これだけの