大熊町民話シリーズ第2号 民話 野がみの里 - 047/056page
郎と名づけました。仁太郎夫婦は大へん喜んで、今までよりも働いて仁四郎をりっぱに育てることにしました。そしていつもお地蔵様にお花やお水を供えていました。
月日の経つのは早いもので、仁四郎は三歳となりすくすくと成長しました。ある寒い冬の日でした。仁四郎が小川の一本橋を渡る時、足をすべらしてドブねずみのようにぬれてしまいました。母親はびっくりして着物をとりかえてあげたが、タ方熱が出てしまいました。熱さましを呑ませてもさっばりよくなりません。二日三日たっても熱は下がらず、食物もとらなくなりました、村、医者にみせてもさっぱりよくなりません。困った仁太郎夫婦はお地蔵さんにお詣りしました。でも仁四郎は苦しむばかりです。毎晩一睡もしない夫婦も一日一日弱ってしまいます。
シンシンと雪が降る晩です。トントンと戸をたたく音がします。びっくりして仁太郎が戸を開くと、若い男が外に立っていました。
「子どもさんの看病、さぞお疲れでしょう。今晩は私が看病してあげますから、ゆっくり眠って下さい。悪い時はおこしますから。」
「あなたはどなたですか。」
「これはたまげた。私をご存知ないのですか。近くの者ですよ。心配しないで休んで下さい。」
どこかで見た人であるが思い出せません。この人の厚意に甘んじて二人は眠ってしまいました。