大熊町民話シリーズ第2号 民話 野がみの里 - 054/056page
あとでみると、石の上に馬のひずめの跡が残っていました。家来たちはだきついて向う側に渡ったので、だきつき石とよばれています。
《第二十九話》
目洗いの湯 (野上)
野上字老神(うばかみ)前にあり。今は昔の言葉に、「沢に木を伐る杣(そま)人も、数多(あまた)山越す旅人も、此処姥ケ前に至れば、眼霞(かす)み、前途朦朧(もうろう)として見え別(わ)かず。神を祈りて流れに漱(そそ)ぎ、目を洗えば、不思議や水に験(ためし)ありて眼冴(さ)え、以前の自分の目とも思えぬ程、万象(ばんしょう)あざやかに見別(わ)くるを得たり。」と。えぞ玉の湯の下を流るる川添えに今も盛んに湧き出ずる目洗いの湯なり。