大熊町民話シリーズ第2号 民話 野がみの里 - 055/056page
《第三十話》
岩船の湯 (夫沢)
むかし。
岩船にイトというばあさんが住んでいました。大へん正直者でありよく働くのでみんなにほめられていましたが、困ったことにカサッポという皮膚病に悩まされていました。薬草で洗ったり、くすりをつけたりしましたが一向によくなりません。近所にもクサッポで苫しんでいる人もたくさんいました。
ばあさんは何とかしてこの業病をなおしてしあわせになりたいものと近くの神様に毎朝お詣りにいきました。
ある晩ふしぎな夢をみました。
「家の東十間(けん)の所をほってごらん。湧(わ)きでる清水をわかして洗えば必ず治る。」とのおつげで目がさめました。
ばあさんは朝起きて家族の人たちにこの話をしましたが誰も信用してくれません。しかたなしに、ひとりで道具を持ってでかけました。そこはじめじめした谷地(やち)でした。水はすぐ出ました。