大熊町民話シリーズ第3号 民話 野上川 - 003/024page
昔、北向の里にオタカというお嫁さんがいました。生れは小高在の高という所、十五才の時望まれてこの里の五助のお嫁さんになりました。
五助は生れて間もなく父親が死にました。五助の母親は大へん気丈な女で親たちに苦労するからもどって来いといわれましたが、一人でやって見せると頑張りました。子どもの五助がすくすくと育ってくれれば苦労はないのだが弱い子どもで母親は手を離すことができません。田畑も山もたくさんありました。これをどうしても五助に渡さねばなりません。
弱いながらも五助は十五才になりました。遠い親戚のオタカを嫁に迎えました。これで母親は、一安心という所、しかしそうは参りません。五助夫婦はどちらもまだ子ども。ことに五助は過保護に育ったから働くことが大嫌いです。オタカはせっせと一人で働きましたが中々思うようにはかどりません。
でもシュウトメの母親は親切でした。そのうち仕事も覚えるからと何かと面倒をみてくれました。晩(おそ)いながらも田畑の仕事が終ると山にタキギをとりにでかけました。五助の山は小高い森の下にありました。オタカはせっせとタキギをとりました。大ていは一人でしたので一日一回はこの森に上りました。そこからは小高が一目に見え天気のよい時は金華山もうっすらと見えました。
オタカは小高に向って大きな声で叫びました。「オッカー、元気で働いているよー」そして涙が