大熊町民話シリーズ第3号 民話 野上川 - 005/024page
一寸手で味をみるとどうやら酒のようです。こんな山奥に誰が酒をつくっているのかふしぎでたまりません。キツネのしわざかなと思ったがそうでもありません。酒好きの作兵衛は飲む程に酔って眠ってしまいました。夜中に眼をさましましたがこんな時はじっとしていることだと思って朝になるのを待ちました。そのうち東の空が明るくなったので東に向って歩き出しました。朝は酒は飲みません。
家に帰ってその話をすると隣の金作がそれはサル酒だ。これから行って全部持ってこようといいました。作兵衛は行きたくなかったがウソつきと思われると思って二人で山に入りました。二人はどんどん山に入りましたが、サル酒の所へは行けません。作兵衛は金作じいさんに何回もあやまったが心の中ではこれでいいんだ。サルだって苦労してつくった酒なんだ。
あの話はおれ一人の喜びでいいんだと。