大熊町民話シリーズ第3号 民話 野上川 - 006/024page

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 《第四話》

  じじ石とばば石

昔、大川原の山にはたくさんの栗の木があって秋になるとみんな栗拾いにでかけました。里近くは若い木ですが奥に行くと大木が所々にあり多くの人はその大木をまわって拾ったのです。朝暗い中に山に出かけ栗の木の下で明るくなるのを待っている人。栗の木の下で夜を明かす人。誰は何石拾った。誰は何升しか拾わない。そんな話が村中に伝わるのです。

孫兵衛老人夫婦も朝早く弁当を持って栗拾いに出かけました。長年の経験で栗の木一本一本よく知っています。しかし若い人たちは一足早く廻ったと見えて余り栗は落ちていません。孫兵衛じいさんはこの辺は余りないから日隠山まで行ってみようといいました。ばあさんも山には馴れています。上へ上へと歩いて行きました。栗は落ちていました。拾う程に夕方がせまって来ました。しかし山に明るい孫兵衛じいさんも道に出ることができません。二人は夢中になって山を歩きました。

つるべ落しの秋の日は沈んでしまいました。孫兵衛は頂上に行って天狗さんにとめてもらおうといって拾った栗をすてて山の頂上に登りました。天狗はいませんでした。山の上ですから寒さもきびしいし腹もへってきました。二人はより添ってお互いに暖をとっていましたが朝


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