大熊町民話シリーズ第3号 民話 野上川 - 016/024page
せたいと話された。以下がその内容である。
《第十一話》
大判小判が夜泣き金谷長者
むかし、むかし、金谷の里の長者さまは、一夜のうちに滅びてしまったとさ。
金谷の里は今の大熊町下野上字金谷平で、原発の町の白いスマートな役場の西手に広がる。こんもり茂った森が長者屋敷の跡。田んぼになった牛土渊沼での変事が、長者さまの身の上をどう説明するのかわからない。とにかく、屋敷跡では大判小判が夜泣きするそうな。× × ×
一の蔵には米俵。二の蔵にはみそ、しょうゆ、三の蔵には祝儀用のおぜん、おわん…と蔵が七つもあったと。
大勢の作男がいた。久麻川の浜から砂鉄を取り、炭を焼き、鉄をふく(製鉄)、農具を作る鍛治屋がおり、売り役もいた。山にはウルシを植え、ウルシがめがいくつもあったと。だから暮し