ならはの絵馬−村人の祈り−-017/036page

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   村社八幡神社奉額狂句合
   東京蝶々子甘屋根撰
    兼題
   短句 木も草も秋のしるしに色見えて
   前句 何所の内でも/\
   同  始めて/\、是はしめて
   冠  ちょっほりと 真丸 背 しっかりと
   沓  六ツ七ツ しらぬふり やくそくし
   折白 カクヲ ア一字 ケロテ
   一句立 角力

第一本 限りなき皇緒御孜も翁草 川中子 規令
 二 昔より連綿として御一系 小名浜 蘇鉄
 三 難有さ汎(ひろ)く民を無撫され
 四 確(しっか)りとして動きなき宮柱 川中子 規令
 五 まん丸くしはし額づく神の庭 末ツキ 豊玉
 六 昔より神窓へ清き水の月 田ノアミ 玉昌
 七 放生会から月の夜へ約束し 三沢 玉水
 八 教育は蛍を拝む手の具合 川中子 規令
 九 しっかりと札をして置く種俵 三沢 如水
 十 確りと橋に誓ひの文字を書 久ノハマ 涼風
 十一 落武者に桶を冠せてしらぬふり 三沢 玉水
 十二 相共に安危をはかる老困者 小名 □悦
 十三 むかしの□虫今の陛の育児院 三沢 如水
 十四 徳に入る門の掃除に花と歌 田ノアミ 玉昌
 十五 弓矢神祭典相撲強く□ 田ノアミ 玉麗
 十六 前代未開福島の競馬旅行 三沢 如水
 十七 誘いの馬は福島一県下 田ノアミ 玉麗
 十八 節々を知らせる鵙(もず)の高啼 小名 松月
 十九 神のやう功徳をすれバ拝まるる 白岩 石羊
 廿 花見の戻り茶話会を約束し 小名 蘇鉄
 廿一 叱られた袂(たもと)に梅が六ツ七ツ 小名 サダヨ
 廿二 蚊柱が崩れて水の音すずし 好間 好文
 廿三 村雨に軒の玉水六ツ七ツ 川中子 規令
 廿四 有り丈けの戸明払ふ秋の月 深山田 深井
 廿五 竹の子の内から杖のやくそくし 神谷 金志
 廿六 明け建てに雨戸の軽ひ秋の風 東ツキ 豊玉
 廿七 しっかりと木を抱きしめて秋の蝉 小名 サダヨ
 廿八 見る人に扇を借りる勝ち角力 小久 谷柳
 廿九 里の子供のはやす□かね 富ヲカ 泉流
 卅 □包子鹿の声ぞやさしき 三沢 令雅
 卅一 隣使も能/\(よくよく)余る六ツ七ツ 末ツキ 豊玉
 卅二 ちょっほりと顔に□□ハ親譲り 上小塙 高山
 卅三 ちょっほり笠の旋風に積る雪 上小塙 木公
 卅四 万丸く踏散している繋馬(つなぎうま) 深山田 深井
 卅五 まん丸くナッテ世間を巡って来 小名 サダヨ
 卅六 風邪ひかす薬知らずと老自慢 田ノアミ 玉麗
 卅七 程に呑メ薬ぞ猪口(ちょこ)に六ツ七ツ コシマ 好河
 卅八 □を打相人にチョイト銚子が出 大谷 梅林
 卅九 むかしなら杯と歯茎を食いしめる 大谷 国柳
 四十 音しした事を思ヘバ今おかし 小名
 四十一 朝帰り二三度親もしらぬふり 川保
 四十二 かき裂も苦にならない帯の下 玉霊
 四十三 □臭き庫(くら)の箪笥(たんす)をッ開き 小名 対月
 四十四 取組の上手買われて来た角力
 四十五 しっかりと見へ存外な後家の帯び 荒田日
 四十六 亀の子の首を見て居て大笑 白岩 石羊
 四十七 まん丸と肥えたと答る下女の尻 小名
 四十八 並べたる二ツ枕の恥ずかしさ 末ツキ 豊玉
 四十九 ツレ出して居るを横目てしらぬふり 小名 松月
 五十 毛の圃の中に天然出来る沼 三沢 玉水
  軸 月も三ツ組銀式の月も九献 蝶々子甘屋

                        当村
                        松本弥惣治
                        蛭田 他七
    明治二十七年申午九月祭日  松本 源吉
                        松本 保重

句額
27.句額 明治35年(1902)          上小塙 木戸八幡神社(日暮22)
 当神社で九世柄井川柳の評点により、「慎奉献磐城木戸川大滝祠」を兼題に狂句(川柳)合わせが行われた。高名な文人との 交流があった。

  奉献 八幡神社 大滝神社 狂句合
    兼  慎奉献磐城木  外二柳風乱題
       戸川上大滝祠

立評九政柄井川柳宗匠 副評東洋舎川桜先生
泰  祭政一途敬神を御奉迎 田ノアミ 玉麗 天  天温の大慶甘泉湧く皇国 田ノアミ 玉麗
戸  開け行く御代は戸ささぬ嬉しさよ 上  籏章も天日上国の地味旨し
乱  敷絶の玉と成たる松の露 玉麗 乱  風なき日和嘯(うそぶ)かぬ虎の跡 当大谷 松寿
戸  今なら岩戸へ楽隊で奏す所 当人谷 松寿 木  御神威も他に勝雄木の宮造
乱  世は無事に栄花積込む宝蔵 白岩 石羊 木  一山百景常盤木の地に鎮座 玉麗
慎  謹んで拝せは無事を守る神 猪長 滝  感慨の御仁露滝の下流れ 松寿
滝  零中に光り郷く滝祠 大ヤ 桜井 上  上下の嘉儀にも隙のなへ初日 末ツキ 豊玉
城  何時間でも名に残っている城の跡 ミヤマタ 深井 乱  国庫の新築玉敷くの吉方位 玉麗
大  虎の気韻書の見識(みわけ)ル大雅堂 下川 道風 上  見上れハ雲井も仰ぎ香爐峰 如水
乱  長き苦を忘れて仕舞ふ稲の出来 石羊 大  大神の加護蟻となり蜘となり
滝  あらたかに霊威の闇へ滝の音 末ツギ 豊玉 上  上を見ぬ笠こそ国の宝なり 広ノ 猪長
木  常磐木の山路に鎮座軒ハ木戸 木寿 奉  奉の字を初筆に記す神の籏 当大谷 耘樵
慎  慎みの後は立派な花が咲き 大久 柳輿 献  九献穂に気立目出度日本国 玉麗
大  大滝の流れ汲合ふ木戸の民 松寿 城  籠城の奇計万古の亀鑑成 如水
木  猿に登られて嘉平次木から落 深井 川  川開き見よ慶雲と化す花火 玉麗
川  川水の流れをもてよ人ここ泳ぎ 柳輿 慎  其独り憤しむものハ君子なり 当大谷 木公
木  箒木栄ふ園原の夜の雨 泉村下川 華村 川  人形の名は幾千代も衣川 大久 櫛田
乱  鞋履く身も靴で来る菊日和 道風 乱  赤きこころを白雪に残す義士 松寿
川  川の底探るハ清き水心 華村 城  赤き心は会城の白い虎
慎  慎んで神の御前に手を合わせ 大ヤ 滝  西行も東に戻る滝の裾 木公
乱  山水の滝き流れに気養ひ 豊玉 滝  子の世話をする頃気付養潰の滝
滝  初秋を知らす夜更の滝の音 大  大吉方ハ和合家のうちにあり 松寿
乱  麗かさ向ひの山に斧の音 滝  六根の埃りを霊へ滝の尻 柳風
木  秋の立つ音は木にあり水にあり 滝  身の黒衣色褪るまで滝籠り 松寿
上  風船や虚宮に上る知恵袋 当大字 耘樵 滝  あしき風四方に吹き散る滝の塩 柳風
戸  草の戸の送り迎ひも蟻任せ 豊玉 滝  滝籠り夜は麓から明け渡り 豊玉
川  越てから探い川たと詠めて居 末ツギ 藤長 木  筑波根の木の葉を潜り水無の川 豊玉
木  戸を明けて風も入たき夏の月 大  大海を望み木の葉を潜る水
川  影見れパ星の川辺の梅の花 平クボ 柴ノ戸 着  猿に登られて嘉平次木から落 深井
乱  これ程の暑も知らず筏さし 石羊 乱  孝子子を持て我身を鏡立 玉麗
上  夕立に洗い流して橋の上 豊玉 水  木戸の民賑ふ滝の水煙り 大久 柳輿
滝  里にてもあればや杯と滝を誉 深井 滝  滝を背に川を抱たる木戸の里 豊玉
川  零深く人声計り川迎ひ 末ツギ 如水 木  秋の立つ音は木にあり水にあり
木  盃に木の葉放り込む神祠 大ヤ 国柳 乱  岸に橋花の其の名は芝錦 玉麗
城  車のみ聞ゆる淀の城近し 末ツギ 玉雪 滝  茶にも滝酒にも滝の噂が出 豊玉
木  絞らるる油意見の〆定木 川  鴛鴦肌となるまで墨田の川納涼 玉麗
戸  戸に触る風に珊もやわ/\し 柳興 上  下水飲ミ/\上流に住む鯰 松寿
戸  朝顔に待れて聞く隠居の戸 深井 上  土用乾し身上振りが人に知れ 豊玉
上  同じ手足でするにさえ上手下手 当大字 木公 上  写真顔ては上等当嫁えらみ 玉麗
上  湯上りに斗り忘るる旅労れ 如水 慎  慎んで嫁爪隠す月の琴
上  字は下目人を上目に見る眼鏡 国柳 慎  慎んで婿末タうたぬ碁の手本
大  大きくて張子の[ ]軽く出来 当大字 至虫軒 常磐木も流れて蛸に吸付れ 木公
戸  彼是の噺うるきき寄合井戸 末ツギ 玉麗 上  我儘の上なし損に立つ短気 如水
水  松茸に知らぬ木の葉のねば付き 大久 柳風 乱  夜借りて十月て□く成す女房 白岩 石羊
乱  急度行ますと花見の約束し 藤長 大  大嫌ひとハ若後家の口八卦 玉麗
大  大切に守れと親の譲りもの 猪長 大  大黒柱が大きいは嫁喜悦 石羊
大  虫ほしに大事な物を見たばかり 深井 盛り方が下手で芋汁安く売り 松寿
大  大丈夫婿親船の舵を取り 如水 滝  溢るる滝壷白い泡流れ出し 玉麗
大  大切な金庫を不在中苦労 玉麗 大  大漁万作滝宮と和す豊受
上  姫百合の上より下がる蜘蛛の糸 柳風 橋の上陰陽凝って地を結び 松寿
   軸       軸
滝  見たばかり 威徳ハ音なく
汗取りになる 谺なす
滝の布 川柳 滝の神 川桜
花膳評 三才評
乱  雪の宿焚火に積る世の寄談 泉村下川 福瓢 川人 気にあわぬ連れに別れの櫛田川 大谷
滝  夜籠りの目をさましたる流の音 当大字 川保 本地 日に□れたる橋の夏木立 大久 柳風
慎  慎んで拍手拝す御神前 大ヤ 小香 上天 読むみの上にも涼し楠の風 当大字 至虫軒
  明治参拾五年九月十五日               陸軍歩兵一等卒 松本好丸

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