わたしたちの郷土楢葉町 楢葉町小学校社会科教師用資料 - 092/110page

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4 岩沢(いわさ)の観音さま

 岩沢に観音さまがあります。子助け観音とも呼ばれています。御堂の近くの岩肌に観音像が彫ってあります。高さ一丈もあるところに彫ってあるので手は届きません。

 この観音像、今からおよそ百数十年前いづこから訪ずれたか一人のお坊さんが、朝から一晩がかりで彫り、その晩のうちに飄々と立ち去ったといわれます。

 話し変って、この部落のあるお嫁さんがお産をしました。初めてのお産とて、姑に余りにも気づかいすぎてお乳が出なくなってしまいました。赤ちゃんがおなかをすかしてひいひいと泣けば泣く程、お嫁さんもどうしようもなく、心配のあまり益々お乳が出なくなりました。

 思いあまって、この観音さまにお乳が出ますように「願」をかけました。そして滿願の日、観音さまの声とおぼしく、
 「この崖に、乳房のような形をした岩がある。そこの岩砂を少しとっていきなさい。そして麦を煮たてた汁の中に岩砂を入れ、さめたら三回に分けて飲みなさい」
 お嫁さんは大変喜んで砂を少々とり、いわれた通り麦湯をつくり砂を入れ三回に分けて飲みました。すると不思議、乳がはってきて、どくんどくんとでるようになり、赤ちゃんは丈夫に育ちました。

 それからというもの、難産や乳の出ない近郷近在のお嫁さんが参詣にくるようになり、乳房のような形をした岩を乳岩(ちちいわ)というようになりました。

 (永山静江・下小塙)

5 狐のお産

 今から百十年程前のことです。大谷部落に坂本仲栄という医者がおりました。仲栄は14才の時、武州川越藩の名医に弟子入りし、6年間の修業をして大谷の山岸の自宅に帰り開業しました。産婦人科が専門で、その名は近郷近在に至るまでよく知れわたっていました。

 秋もたけなわの11月の夜のことです。鈴音をチャリンチャリンとたてながら提灯をぶらさげて馬に乗った25,6才の男がやってきました。


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