わたしたちの郷土楢葉町 楢葉町小学校社会科教師用資料 - 097/110page
やがて、新しい年がこようとする頃、やっと借金取りはこなくなりほっと安堵の胸をなでおろし、子どもたちと形ばかりの年取りのご馳走を食べ新しい年を迎えました。
と、その時です。入口の外で、「どさァ」という、それはそれはずんない音がしました。若しかしたら借金取りが腹いせに大きな石でも投げて行ったのではあるまいかと、みんな顔を見あわせ肩をすくめました。
お父さんがおそるおそる入口の戸をあけ外に出ました。しーんと靜まり返りました。やゝしばらくして、突然お父さんの尻餅をつく音が「どすーん」と聞こえました。家族の者は、「お父(と)が大変だ、お父どうした。」とみんなで駆け寄りました。
ところがどうでしょう。腰を抜かしたお父の前の袋から、大判小判がザラザラと出ているではありませんか。天にも昇るような喜びでした。大判小判をじっとみつめる者、うちつけて音をたしかめる者、舌で味をみる者、数える者、それはそれは大変なさわぎでした。
その夜は一睡もしないで、みんなで喜びあい話しあって夜をあかしたということです。
それからは尚一層仕事に励み幸福に暮らしたということです。
(大川光三・繁岡)