須賀川市立博物館図録 俳諧摺 上 -070/113page

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10 甫赤大祥忌摺

菜の花や何処(どこ)へとふ行滝の末 梅 室
小むしろに這(はい)習ふ子や花のかけ 陸奥 多よめ
はる雨の海雲(もずく)買けり精進日 江戸 一 具
鳥も居ぬ門田に降やはるの雪   為 山
折と手を風のはなるゝ柳かな   卓 郎
蛙なく方へ杖(つえ)つく小家かな   山 妓
撫(なで)てしる木裏の霜や初桜   苣 丸
すみれ摘ためにもおろす田舟かな   荷 少
竹の秋田芹(せり)の花はちりすまし   芦 月
ちる花や暮ををしかる人の上 □京 文 海
人の日を惜みて夜るも更しけり   梅 年
別れつゝ逢つゝ蝶(ちょう)の眠りつゝ 弘前 蕉 滴
はる雨や洩る日の影は八つ下り   五 渓
日影もつ程に成けりさし柳   仕 候
羅(うすもの)を召れたかけやはるの月   松 光
一嵐ふきためてあり桜貝   良 月
蝶(ちょう)の来て見て居る菊の根分哉(かな)   大 蕪
春雨に見かへす夢のさむさ哉(かな)   子 考
若草や去年(こぞ)来し道と思はれす   撲 夫
花の雲日も人かてに見ゆるかな   可 藤
山ふきや水に蒔絵(まきえ)のちらし書   可 楽
細布を織り織り軒の乙鳥(つぱめ)かな   一 瓢
一夜寐(ね)てむかししのはん野ら菫(すみれ)   有 節
また空もつめたし春も名のみにて   句 佛
うくひすに教られけり法の道 黒石 松 年
手向にもけしきもたせて桜海苔(のり)   紀 計
かしましき中にさひあり夕蛙(かわず)   ト ニ
寐処(ねどころ)を二階にしたり梅さかり   見 龍
陽炎(かげろう)や土にしまりのなき所   北 夫
いちいちの花のかけあり閼伽(あか)の桶(おけ)   龜 山
立去りし古巣ゆかしや鳥の影   鬼 堂
大船の動かぬ日なり舞小てふ   三 知
ちる花のあとに鳴なり夕からす   柏 年
降ほとの天気てもなし虻(あぶ)の声   二 山
諂(へつらい)もなき庭先や赤つはき   太 成
梅か香やこゝろのうこく朝手水(ちょうず)   賀 松
蝶鳥(ちょうとり)のたつねて来るや碑の辺(あたり)   清 丸
此(この)ころは膝(ひざ)にもよらす猫の妻   如 文字
燕(つばくろ)の居ならふ隙(すき)もなかりけり 枝川 英 里
心のみ蔭(かげ)て手向ん梅さくら 蓮花田 長 耕
鐘ついた手てひとつかみ花すみれ 舘岡 湖 山
俤(おもかげ)の一日さひしはるのあめ 板柳 汎 乎
うくひすの初音もけふの手向哉(かな)   祖 年
買足して仏事する若菜かな   文 友
眼の先の樹々も霞(かすみ)て嶺(みね)のかね 木組 軒 梅
炉の炭の消たまゝある二月かな 尾上 梅 笑
踏て見る土のゆるみや蕗(ふき)の薹(とう) 青森 素 岳
こゝろして降夕雨や草の萌(もえ)   白 魯
養父入(やぶいり)の来てかゝけるや仏の灯   芳 山
草臥(くたびれ)て春の夜しりぬかり枕(まくら)   祗 春
さしかけた傘の端より春の山   有 川
牛士(うしかた)の伸て折ゆく柳かな   歩 牛
かねの音のものにこもりて春の宵   素 笠
茶の口に鶯(うぐいす)を聞立場(たてば)かな   可 商
おほろ夜や歩行馴(あるきなれ)たる畑の道   北 羊
三日月のかけ冷たいかなく蛙(かわず)   祗 席
青柳や暮るゝもしらて遠歩行   酒 泉
玉味噌(みそ)の香もかくれけり梅の花   素 川
よい処(とこ)に水あり山は花さかり   冬 古
雉子(きじ)なくやこちら向たる山の家   祗 文
常灯の一段高しおほろ月 青森 冬 里
はる風や火縄口ひし□の口   素 文
うくひすやほの々明の小松山   祗 庭
摘あとを小鳥の文字(たべ)る若菜かな   一 升
若草や駕(かご)の戸あけて一休み   冬 暁
海原へ舞こむ朝の小蝶(ちょう)かな   祗 存
としよれとかくれては居す花の春   冬 有
一雨を通して唄(うた)ふ茶摘かな   如 峯
梅か香や筆取なから文字(ひじ)まくら   弘 年
越かねる川なかめやる霞(かすみ)かな   長 楽
待し日をかひなく花の留守居哉(かな)   一 芽
雪まけを見せぬ椿(つばき)のさかり哉(かな)   呉 雪
泥(どろ)ふんた鶏も見えけり梅の花   淇 川
うめ咲やきのふにかはる旅心   長 眉

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