須賀川市立博物館図録 俳諧摺 上 -072/113page

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11 俳諧之連歌

天保十四卯歳十月十一日通夜於
無為庵興行
 俳諧之連歌
  芭蕉翁  
されはこそ
 あれたきまゝの
      霜の宿
芦(あし)ををりをり干菜汁焚(た)く   三 和
牛くるま鷹野のうちは休ませて   風 外
はや瀬を中にわかる口上   水 由
けふといふ月をきのふに待明し   三 和
かりやす染の木綿干すなり   風 外
 
蟷螂(とうろう)のからかひまけし兜虫(かぶと)   水 由
逢ふてわかれし昼のつれつれ   三 和
ほつちりと手箱の紋に文字(ろう)の垂   風 外
奈良人形の投られて立   水 由
暖簾(のれん)まて文字(うた)ふて春の神まいり   三 和
地蔵切出す藪(やぶ)のはつ花   風 外
肴屋(さかなや)かほしかる雪の消のこり   水 由
つけこみわける帳の合判   三 和
五三日革足袋(たび)履て眼のかすみ   風 外
給仕のすへるかさね卓席   水 由
かい干して月に文字(さら)ひし池の水   三 和
黄もうすからぬ秋の山吹   風 外
 
野馬取に列卒(せこ)のあつまる霧時雨(しぐれ)   おなしく
みな粉たはこてひねられもせす   三 和
長い状寐(ね)なから読てかつたるき   水 由
難波仕立は裄(ゆき)かみしかし   風 外
あと継のむすめ引越す懇意先   三 和
やせるほとなる暑さてもなし   水 由
霄凌(ママ)のひらききらすにほろり散   風 外
方位を聞て憂す裏口   三 和
人柄もとこやらちかふ骨屋町   水 田
居酒ほしかる跡連の月   風 外
鹿笛のあはれつほくもなかりけり   三 和
ほかりほかりと野分吹出す   水 田
 
菰(こも)垂て勝手をかくす仮住居   風 外
やゝともすれは系図あらそひ   三 和
衣魚(しみ)の巣て消し暦の巻納め   水 由
仏間のつきはよき日受なり   風 外
ひと筋に粟津の花を直正面   三 和
手ことに汲(くみ)てぬるむ漣(さざなみ)   鼎 涼

海山もしくれ    
  しつまる今宵かな     風 外
かれぬ草凡(およそ)    
 なけれとをはな哉(かな)   水 由
見へて来る時雨    
  かそへるはかりかな     三 和
一首五十周追福し参らせんものは
月か雪かはた花かかへり見れは皆

祖翁嚢中(のうちゅう)の物なり其さやけくいさき
よくかんはしきにほひを慕ひて忍ふ
柴の戸にしくるゝ夜半の軒のしたゝり
三四ふたつ寂に音して終に一巻となれる
をいさや一束ねの芻(まぐさ)にとて捻(ねん)香九拝し
奉りなを回遊の志もさこそとおし
はかられぬれは折しも打くもる雲
紙(かみ)に謹てひと言を加ふ 
三和

文字書 印


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