須賀川市立博物館図録 俳諧摺 上 -073/113page

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12 参宮記念摺

瀬のうへにはり出てはやきもみちかな   立 宇
あさかほの降雨はちく盛かな   漣 山
高低に成た文字(かもめ)のしくれけり   卓 池
撰(えり)出すや木の葉ましりのすくひ鰕(えび)   水 竹
鴨(かも)の背にたまるほと降しくれ哉(かな)   塞 馬
持て出た手燭(てしょく)に照やふゆの月   而 后
家数たけ麦も作るや山のすそ   月 底
ゆったりと不二を居(すえ)たりあきの空   虚 白
あそふ身の果報や秋の閏(うるう)月   礪 山
  十三夜
あまりある年や霜夜の秋の月   梅 室
一撫(なで)に寺も樹もなし雪の塔   九 起
朝々や炭わるおとを起ちから   岱 年
まかりめの蔵にけらるゝ花火かな   杜 蘗
かれ立てまた花のさく黄きく哉(かな)   壽 堂
葉うるほひありてめてたしいねの花   丈 翠
千鳥にもあれし関屋の畠かな   淡 叟
寒きくや切あらしたる菊の中   文字 左
余所(よそ)の戸の明に寐(ね)覚める寒哉(かな)   其 山
まつよひもふたり語れは夜のふける   天 来
山ひとつはなして見るや秋のくれ   文 外
海苔麁朶(のりそだ)や波ゆら々と春のたつ   台 岳
しらうめやわけても白き杜(もり)の中   悦 女
はつ春や奇麗にちらす童所   松 居
ぬすまれし猫やもとらんおほろ月   筑 川
ほくほくと眠る神馬や松のはな   竹 窓
紅梅のさかりは長きつほみかな   棋 水
年を経て見よきは梅の木ふり哉(かな) 八十二童 柳 枝
ねんころに万歳をまつ山家かな   既 来
鶏の蹴合(けあい)をわけるやなきかな   而 日
うくひすにしふしふあかる日より哉(かな)   雪 文字
なの花やかけあかりたき一里塚   潮 井
  このかみのいせまうてを祝して
きさらきの嵐(あらし)を余所(よそ)や麦の丈   梅 女
うくひすのわすれすもかな軒の松   其 翠
春雨やおこされて見る日のゝほり   志 雪
さそふ水あらはとしたれ柳哉(かな) 伯 道
老たるもわかきもともに柳かな 文字 簾 水
のとかさや左の耳に鶴の声   鳥 雀
海見ゆるまてのほりけり春の山   曽 山
くゝり行華表(とりい)のうちやはるの風   雨 麦
うめか香や盥(たらい)の湯気ののほる朝   有 節
雪とけやはしめてくもる朝のそら   雪 操
大雨のはれる跡からかすみかな   小 叢
鴈(かり)行や水にうき出るたね俵   可 有
日あたりへ蓙(ござ)引するやうめのはな 伊勢 烏 白
池尻の芝生なたるゝ雪解(ゆきげ)かな   伯 遠
さらさらとあられやたゝく花の枝   笑 山
不拍手とひやうしとりあふ薺(なずな)かな   濤 々
朝よりはゆふへにぬくし冨士の山   白 鴎
寒明て二夜とたゝすねこの恋   山 外
力付くまてを朧(おぼろ)のかはつかな   方 有
月に成て花の見やうのかはりけり   支 山
笠の入るほとに柳の青みけり   蕉 水
すらすらと上るたゝみや柳かけ   叩 月
庵の戸の出て来た跡をかすみけり   無 然
一羽つゝかすみ離るゝからすかな   東 升
水に陰たしかにさして谷の梅   太良参
松はまた夜深し花に明た空   千 嶺
わけて出てふり向て見るやなき哉(かな)   鴎 崘
うくひすや雨に二度寐(ね)て聞はつし   一 具
恵方はと問はゝ年々よし野山   鳳 朗
里や野の和(やはら)きそめるかすみかな   由 誓
はりあふてうくひす鳴や籠(かご)と藪(やぶ)   雲 山
動かねはなほなほ眠きやなきかな   桃 磯
やませともない寐(ね)こゝろや春の雨   伸 女
御慶には出直すといふ隣哉(かな)   水 哉
うくひすや根笹(ささ)の下の家つゝき   呂 川
遠くては啼鶯(なくうぐいす)やよい天気   羽 人
梅か香のまくら言葉か松の声   魯 中
花を見に来る人を見る二階哉(かな)   樹 月
去年(こぞ)に今年足の早さよけさの春   大 屠
山もとや梅をはさみてならふ家   濱 吉
近よれは別々に花のさかり哉(かな)   空 嘯

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