須賀川市立博物館図録 俳諧摺 上 -074/113page
春の月低みを鷹(たか)の啼(なき)て行 云 爾 うくひすの間ちかう鳴や簾(すだれ)こし ふちめ 斯(かく)しても静なものや松かさり 丁 知 鶯(うぐいす)のあし跡雪に黒みけり 南 邨 歩行ても眠気のさめぬ春日かな 萬 頃 ぬれたまま小舟出しけり朝さくら 八百普 いちかいに紅梅ひらく日より哉(かな) 千竹女 万歳かさつとさす日に若かへる 九十三童 碩 布 別餘里快活 相思説吾翁 果憶静軒 盃山静水汲 中 奉送 寺門郎 鳥穆翁西遊 神路やまいかきににほふうめか香も 君か手向の折にあふらむ 永 年 乾坤(けんこん)を栖(すみか)とし春秋を号とし山水を もて沈とし月花をもて言葉とする 鳥穆老人を見送りて その笠に見せてまはるかうめ桜 松 什 見送るやさくら咲中馬の中 大 莫 箱根から先も日よりかあけひはり 七十五童 廉 布 はやかへり来ませ隅田の花の中 嵯 秀 しはらくととめまうしたいか花の旅 八代目 三 升 まちますそわか廓の花うえるころ 久喜藤 足も地につかすあれ梅あれ柳 己 千 まりこのとろゝ汁十団子もわらひ餅も 喰へぬものは俳諧の骨うまき物は風流 のさひ見るもの中(あたり)ものに由断あるな せなどの 木瓜(ぼけ)すみれ伊勢は一里も遠くなれ 卓 朗 おもひたつ旅や二見のしほ干潟 木 翠 としころの本意とけていせ参宮のおもひ しきりによし野初瀬の花もゆかしくかりに むすひし草の庵はみとり色そふ松にあつ けて睦月(むつき)も半過ぬるころ鳥白老人を先達 とし木翠の若すゝりともなひ紫にほふ筑波 山を見かへりかちに花の波こそとよみけむ かの桜川をうちわたりはるけき道の鹿嶋 たちする事にはなりぬ 御子郎子(みしらじ)の梅なつかしやうすかすみ 春龝鳥穆 甲辰孟春