須賀川市立博物館図録 俳諧摺 上 -075/113page

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13雪のふる道

  雪のふる道
 
永四亥の冬  
 はからす
  寛兆老人に
    会し杖を
   おさゆれとも
     寒天に向て
 寒国に帰る
     実に勇なるかな
    雅(みやび)なる哉(かな)
 
文字(かくしょう)と
  にこにこ着るや
     雪の蓑(みの)
東都 星霜菴    北正
 
  各前書略之    
しつり雪下葉うけ取はつしけり   蘭 路
夕飯は行燈(あんどん)となるさむさ哉(かな)   北 治
鳩は木に礼を正して時雨哉(しぐれかな)   棒 外
大雪に力見えたり松の老   治 鳥
根分したやうに殖(ふえ)たる時雨哉(かな)   北 松
小名主も遊里通ひや麦の秋   子 皎
宿引にひかるゝ袖や雪曇り   梅史女
山茶花(さざんか)や無病な空の打続き   北 一
しからるゝ夜は住安し鰒(ふぐ)と汁   北 羊
蒼海も浅しとつくか雪の杖   藍 水
足元の鳥に立るゝ師走かな   梅 鳥
忠孝の重きに軽し笠の雪   北吉女
 
枇杷(びわ)盗み捕へて 二世 互扇楼   
   酒の相手かな 子  彦 子
  机にむかひはうつる
  諸君諸子混題
千金の価おろかや夕さくら 亥芝堂 子 孝
夜興曳(よこひき)や采配(さいはい)ゆるす山かしら   子 山
天平(てんびん)のむしろはまねな岡見人   北 亜
怠りを風の補ふ鳴子かな   北 文字
待受た戸にもとりけり雪の鳥   北 虎
婆婆役に咲て見せけり木蓮花(もくれんげ)   暹 烏
雪折や夫から何の音もなき   旭 鳥
氷る夜や風に先立下駄の音   一 貫
珠(たま)とりにいさ漕出(こぎいで)ん月の海   暹 興
一船て手のうてにけり夏鰯(いわし)   子 徳
三尺のぬきさしするや雪の杖   朶 暁
畳さす小家や盆の月明り   文 河
湖の夜や明わたる山のつゆ   九 賀
七夕や手向の笛も一夜きり   窓 雅
冬を待心覗(のぞ)くや黒木うり   五 友
置露の置きは落る草葉かな   青 雅
 
御簾(みす)巻て置直させつ鉢の菊   彦 岐
行合の雲しはらくや天の川   東 林
和らかな酒に酔けり夕紅葉   彦 俄
灯の影深草や露しくれ   秀 丸
星の名を算(かぞ)へもとるや鳴千鳥   彦 岱
接待やうとん花(げ)の咲人こゝろ   芳 秀
朝露や蝦夷地(えぞち)にちかき七合帆(ななごうほ)   其 文
鎌首に朝戸する軒や後の月   桂 林
快よきはこたひや後の二日灸   素 厚
孫持て祖父祖母おもふ雪見哉(かな)   糸 女
蕪(かぶ)島や蒔(まか)ぬかふらの花盛り   楠 枝
山吹や踏めは水涌(わ)く此当り   交 簫
山ふきや池の底にも咲夕日 大野 亀 疑
染色の思案出来たり花あやめ 以 文
久慈平や八重立峯の雪けしき 庭 好
巽山比良(たつみひら)の暮雪に増月夜 久慈 彦 枝
朝貌(かほ)の朝茶出る間にしほれけり 野田 窓 渕
しら萩のまたかりて咲小川かな 野 遊
鴛鴦(おしどり)のはれかましさや鴨の中 宇都宮  其 翼
時人をまたすけしちる夕へかな 須賀川  清 民
 
よし切や世話しう啼て場も替す 大川原 江 三
朝夕の日のさし入るや冬の梅 槻木 詠 柳

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