須賀川市立博物館図録 俳諧摺 上 -076/113page

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翌日越る山見て居たり秋の暮 仙台  湖 立
文字 (かや)越しに見ても秋立渚(なぎさ)かな 宗 古
遅日時はおもふ事あるさくら哉(かな) 一 止
鍵裂きも知らて着て来る紙衣哉(かみこかな) 都鳥 北 鱗
近寄れは遠く成りけり梅の花 南 峰
ちか道の新らしうなる長閑哉(のどかかな) 淡 交
舟守に教へられけり雪解みち 一 鳳
鶯(うぐいす)の声を投込む小家かな 都 柳
はつ東風(こち)の障子にさはるゆるみ哉(かな) 花巻 竜 山
傘かりる門は日のさす時雨哉(かな) 貫 三
冬枯て瀧は見得けり柴の庵 月 声
鶏ははやあかりけりふゆの雨 椎 山
先(まず)無事て初日に向ふ袴(はかま)かな 蓬 舟
折くへた柴の埃(ほこ)りやゆきの朝 呂 月
帆柱に見立し杉や木免(ずく)の声 柳 蛙
杖突は合好(かっこう)のよきかみこ哉(かな) 釜石 旦 雪
坂下りるうちは聞えし神楽哉(かな) 竜 塢
蜘(くも)の糸一筋曳(ひく)や小六月 三 帛
 
爰(ここ)らまて山のはしりや枯尾花 南 渓
葉の付いた儘(まま)に梢(こずえ)の氷柱(つらら)かな 南 江
提(さげ)て来て下には置す初かつほ 盛岡 春 岱
笠取て旅人通るのほりかな 黒澤尻 玉 之
一散(いっさ)んにたつむら鳥や氷る声 一ノ戸 松 淵
朝まては大丈夫なり炭かしら 八戸 常 丸
 
  大 尾
 君恩を笠に着れは函谷(かんこく)に
   鶏をおとろかすへき関は
 もとより山坂もなし古稀五つ
    越ぬれと思立事有て旅立
 神達にいさなはれ百六十九里も
    あらき風袖に吹しほらて東都に
   まかり今はた帰路におもむく
かへるさや
  無事て流るゝ
     年を友 七十五童  
    寛 兆
辛亥の
   極月

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