須賀川市立博物館図録 俳諧摺 上 -078/113page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

15 自祝摺

  自 祝
七むかし過てもよしや花の春   夢 庵
歯朶(しだ)うら白に賑はしき軒   雲 庵
肩衣(かたぎぬ)の背中ふくらす東風凪(こちなぎ)て   一 具
咲くなれは人も待せす梅の花   由 誓
八重と見て分入霞(わけいるかすみ)ひとへかな   逸 渕
初空やすみも濁りもせぬ光り   西 馬
うくひすに人やこゝろのとけ初る   尋 香
はつ夢や膳最中(さいちゅう)に聞たかる   臥 春
また暮ぬうちから何を嫁か君   北 松
うれしさは二日も同し明からす   一 具
蝶(ちょう)は皆おなしこゝろかむつましき 秋田 御 風
葉にたまる夜の埃(ほこ)りや福寿草 仙台 禾 月
きのふのも来て鳴足すや春の鳥   宗 古
ふり分て見せけり水としら魚と   一 止
身のほとをおもひくらへよ花の春 須賀川  多代女
往かへり尽せぬ三つのあしたかな   清 民
来た道をもとるてもなき梅見哉(かな) 二本松 東 里
七ふしのあるは稀(まれ)なりつくつくし   菊 也
梅か香に乾き果けりにわたすみ   少 也
松は皆雪に根ふかき子(ね)の日かな   丁 酉
行燈(あんどん)のつく迄(まで)遊ふ子(ね)の日かな   仲 介
砂原や流れさためぬ芦(あし)の角(つの) 杉田 英 泉
鶯(うぐいす)の来なれて庭のうるはしき 本宮 高 壽
万才や古き言葉の古からず   薫 風
菜の花やつまんて呉(くれ)る烟草(たばこ)にも 小濱 斗 翫
暮きらぬうちにほつかり梅の月   于 齋
三日月に朧(おぼろ)ふくみぬ遠洲崎 下太田 鬼 川
おもふ事柳くゝりてわすれけり   紫 山
見へるとて万才告に子のもとる   旭 山
七種(ななくさ)や是とかきらぬよき匂ひ   處 溪
はる風や野は高低の小松こし   文 鶴
垣こしに田の見はらしや飾焚(かざりだき)   雀 笑
笑ふのも嘉例になるや削かけ   蘭 臺
陽炎(かげろう)や一日あそふ鶏の雛(ひな)   花 霰
うくひすや初音わつかに二三声   柳 城
庵に灯はなくて明るし月と梅   蝶 衾
老し身も花には若き吉野かな   梅 徑
すらすらと夜のはなれたる柳哉(かな)   硯 峰
鶯(うぐいす)の声にほこらぬ初音かな   澄 月
よきほとの風のあたりや藪(やぶ)の梅   桃 襖
三日月を後に花のもとり哉(かな)   井 田
老ふりも見へて若やく柳かな   一 露
風すちの野に広かるや春の水   輕 舟
川越て曳(ひく)も嘉例の小松かな   蛙 喉
雪除(よけ)によき松ありて福寿草   戯 固
年ふりし松や子(ね)の日の曳(ひき)残り   銀 砂
和らかに空吹かせやはつ日影   如 猿
撰(えり)分て猶(なお)香の深し磯若菜   倉 山
きし鳴や硯(すずり)のかはく芝の上   如 江
海苔(のり)の砂撰(える)のみ朝の仕事哉(かな)   白 瑛
熊笹(くまぎさ)も香のありさうな雪解(ゆきげ)かな   南 鶴
夜の雨のつやつや残る木の芽哉(かな)   石 樵
沓(くつ)音のかるき日和や梅の花   其 秀
うれしけに立や初日の宮千鳥   常 鳥
いま踏た草に見ゆるや別れ霜   松 橋
延る日のかけや柳の戸口まで   秀 甫
たつた今月見て寐(ね)たに□んと哉(かな)   左 文
初夢や笑ふた顔の今にまて   風 志
春の江や暮おしさうに鴛鴦(おし)二つ   芳 村
江の上や風のわたりて長閑(のどか)なる   朴 齋
教しへたるまゝに子供の御慶哉(かな)   帆 中
蛤(はまぐり)の汐(しお)吹あける日和かな   可曽宜
雪のうへこほるゝ梅のにほひかな   つゝき
凧(たこ)ひとつ広野にあまるうなり哉(かな)   をさむ
梟(ふ<ろう)の声ほのかなりおほろ月   素 雪
餌(え)を拾ふ鳥の居並ぶ雪解(ゆきげ)かな   兎 月
しつかさや竹を見こしの春の月   水 也
蝶(ちょう)舞や機家(はたや)の窓の明はなし   簾 月
明なから雨は止みけり日の霞(かすみ)   一 蓑
しら梅やものによこれぬ朝心   宗 海
かくれ家を浮世めかすや御万才   梅 香
常に似ぬ老のちからや小松引   泉 山
若水やまた足もとは星明り   松 風

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は須賀川市立博物館に帰属します。
須賀川市立博物館の許諾を受けて福島県教育委員会が加工・掲載しています。