須賀川市立博物館図録 俳諧摺 上 -080/113page

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17 田植唄句碑建立賀摺
   (晴霞多代八十寿賀摺)

  晴霞(せいか)ぬしの八十寿を祝して
人多き代にたくひなし君か春   為 山
老松の猶(なお)たしかなり初霞(はつがすみ)   少 哉
有中にひと木珍らし八重桜   ミもと
  晴霞の君の八十の賀に植
  木をまいらせて    
寿や幾春かけて有通し   迎 山
わかものゝしらぬ栄耀(えいよう)や朝納涼(すずみ)   逸 渕
  こは春の小すりにおくれて
  もれたるを序に挙く
 
わか庵や朝起のみを夏(げ)のつとめ   逸 渕
夜毎にも来ねと待るゝ水難哉(くひなかな)   為 山
青さしや人にもよらぬもてはやし   西 馬
絵うちはにものなつかしき寐起哉(ねおきかな)   祖 郷
鳴かたのよく分るなり朝のせみ   等 栽
芥子花(けしのはな)夜さへ明れは散にけり   萬 古
みしかよや葎(むぐら)の宿に人も居す   魯 心
こくあさく垣ねつゝきの若葉哉(かな)   山 子
露けしや一夜とゝめし鮓(すし)の味   鳥 吟
 白川の関
古き世の俤(おもかげ)深し夏木立   白 亥
声に目のとゝく空なり杜宇(ほとヽぎす)   美もと
夏きくや用のなき身の昼眼き   可 簫
湖(うみ)へさす日の照返す若葉かな   俳 禅
よき人にあふこゝちなり不如帰(ほとヽぎす)   好 甫
落る日の槐(えんじゅ)にさして文字(せみ)しくれ   以 粛
夜はあたに脱ては懸たる袷(あわせ)かな   尋 香
山門の雨水すむやほとゝきす   渓 斎
都とは後ろ合せや氷室(ひむろ)山   南 々
さゝ濁りさへいさきよし御秡川(みそぎがわ)   寄 三
袷(あわせ)にはうつり安さよ人こゝろ   桃 郷
木の間もる鐘もなつかし杜鵑(ほとヽぎす)   李郷女
人立に扁とられつ□□□馬   交 水
見る音の耳迄冷す清水かな   半 湖
常はよき木立うるさし五月雨   □ □
たそかるゝ日影抱るほたに哉(かな)   □ □
よしもなく立日うれしき暑哉(かな)   嵐 牛
昼顔や雨におもはぬ花盛り   蓬 口
吐はひる山ふところや鵜(う)のかゝり   而 后
こみあふて花の影なしけし畠   □ □
川音の違ふもをかし口一重   梅 裡
葉さくらや往来たけの砂埃(ほこ)り   一 清
人のさす傘の雫や花御堂   李 曠
くりの花咲はちる迄さかり哉(かな)   醉 雨
目のかよう磯家にも立幟かな   雀 叟
山々の覆ひかゝりて子規(ほとヽぎす)   五 鈴
白いのは見に来外や燕子花(かきつばた)   礪 山
膝近うなるや五月の雨の萩   梅 通
真中へ休みに出るや水馬(みずすまし)   黙 池
孑孑(ぼうふら)のきけんや今朝の俄(にわか)はれ   公 成
山々や青田養ふ吹おろし   淡 節
落てから夫(それ)としれけり柿の花   石 外
釣すてし蚊屋(かや)に溜るや麦挨(ほこ)り   祭 魚
面白き旅とはなりぬ田植唄   月 坡
 中禅寺
山ふかき里や卯月(うづき)にちるさくら   東 樹
水離せしより人の初かつを   玄 子
またいらぬ文字(かや)も出てある馳走哉(ちそうかな)   碩 水
打水に湿らぬ色や百日紅(さるすべり)   霞 川
崖伝ふ水は音なし文字(せみ)の声   芹 舎
うり畑や身にも涼しき通り雨   岳 鳳
奥深くすち壁みえて茂り哉(かな)   湧 瀧
柴橋に箒(ほうき)もあてゝ若楓(かえで)   素 屋
夕顔や寺を後ろに口か家   松 隣
朝しはし雨をなくさむ蚊屋(かや)の中   松 室
山水のいさんて落る田うえ哉(かな)   文字 左
瀧の音近くも遠き茂りかな   曲 隼
牛部屋を出かねる雨のほたる哉(かな)   閑 那
したゝりの遠音引けり苔(こけ)清水   鴎 池
今消た螢袂(たもと)てひかりけり   萬 像
昼聞(ひるきけ)は声に隙(ひま)ある水文字(くいな)かな   亀 年
来た音の窓にこたへて灯取虫(ひとりむし)   羅 邨

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