須賀川市立博物館図録 俳諧摺 上 -083/113page

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18 新年摺

揚る時連も誘はて啼(なく)ひはり 梅 通
太箸(ふとばし)は春をとり得し心かな   芹 舎
氷りても今朝は走りて春の水 浪花 素 屋
空見ても遊はるゝ日や春の風   文字 左
手の足らぬなりに日暮て大根引 備前 遠 々
行もとり旅の咄(はな)しやかれ野原 筑前 木 斎
月代(つきしろ)や明石の浦の浪(なみ)の音   松 坡
大松の下も子の日の遊ひかな 肥前 悠 々
此里にこのひと本や遅桜 日向 双 烏
今取ていまか馳走(ちそう)や蕗(ふき)の薹(とう) 阿波 茶 雷
紅梅の莟(つぼみ)くろむやひとしきり 尾張 而 后
梅越しに日の当りけり洗ひ炭 三河 蓬 宇
飯喰(めしくい)に并(なら)ふうしろや福寿草 相模 梅 堂
万歳の袖から立ぬ朝の風 甲斐 彦 貫
咲たれはをる枝もなし梅の花   斗 一
正月やこゝろのおけぬ泊り客 信濃 双 柳
水音は不断に聞てはつかすみ   事 松
橋下りて見出す雲雀の古巣哉(かな)   文 叔
霞む日や何所(どこ)やら山も匂はしき   和 風
白いのに咲かたれけり桃の花   清 良
植込の雨聞えけり夜の長閑(のどか) 越後 鷺 眠
春もまた浅し氷にもとる浪(なみ)   積 翠
鴈鴨(かりかも)や空にも旅は見える春   契 史
昇る日に添ふてけふるや草の霜   雪 湖
降るを見て鶯(うぐいす)鳴や春の雪   秀 女
常といふ日を正月の遊ひかな   常 晴
春の鳥人の朧(おぼろ)に見ゆるまて   習 静
露をさへ見初るけふの薺(なずな)かな   未 足
伸(のび)る日のそよく柳に見えにけり   乙 良
人ひとり見掛て遠し閑古鳥 会津 茶 三
よい色に茶の出る朝や春簾(すだれ)   坡 石
文字水にやゝくつろきぬ旅こゝろ   桂 留
菊の香にせまき離の座敷哉(かな)   布 山
さしていふ松も野にあるえ方哉(かな)   梅 二
風もまた見えぬしなへや今年竹   可 應
十月や馬につけ行青松葉   松 露
放し遣(や)る鷹(たか)に気も添ふ行衛哉(ゆくえかな)   知 芳
高飛もするや蛍の群し中   梅 郷
涼風やそたてし竹の吹通し   芝 風
早けれと泊りし家に雛(ひいな)かな   精 器
若水やわひしく見ゆる古手桶 米沢 月 山
春風に鶴の餌(え)を蒔(まく)流れかな   文字 山
桐一葉小雨も晴し傘の上   鶯 珍
いつ晴てかゝる月夜やはるの雨   朶 峰
元日やきのふには似ぬ日の長さ 奥  多よ女
薪積たそとは若菜の畑かな   文 起
かへり見る身は老近し鏡もち   静 夫
似合しき腰掛客やことし酒   春 哉
秋深し案山子(かかし)にまとふ草のつる   一 宣
さはかしく淋しき秋の雀かな   清 倭
来た人のきけんにうつる小春哉(かな)   清 民
居直してはつきり聞や初からす   □ □
前に川ひかへて春の寒さかな   扇 □
囀(さえず)りやはり合ふかして鶏も鳴   分 字
鶯(うぐいす)ややとり木を見る雨の晴   詠 柳
草の香に雨気つきたる二月かな   樗 影
うくひすの長飛を見る流れ哉(かな)   五 雲
膝に手をおけは声あり初烏(からす)   舎 用
掛てある鍋(なべ)に人なし桃の花 南部 車 陸
太箸(ふとはし)をくらへても見る弟かな   三 帛
見えぬ間は眼の遣(つか)はるゝ雲雀哉(かな)   龍 山
藪入(やぶいり)や料理好まぬ身たしなみ   まさを
堀掛し松の根にさく菫(すみれ)かな   雨 清
見た事に心つきけり筆はしめ   松 賀
請合の日帰り舟や朧(おぼろ)月   億 年
海鳴りの和らく梅の匂ひ哉(かな)   雲 甫
向ふうち心動かぬはつ日哉(かな)   嬉 月
咲みちて夜空静まる桜かな   呂 月
夜も吹て居るや高みの春の風   南 渓
年札の口て払ふや袖の雪   南 江
日の影は退(のい)てもまねく尾花哉(かな)   吐 月
朝冷のする此頃やわたり鳥   晩 翠
灯の消て手の筋見ゆる火鉢哉(かな)   逸 志
筧(かけい)のみ音の聞えてはるの雨   李 輔

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