須賀川市立博物館図録 俳諧摺 上 -084/113page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

陽炎(かげろう)の消ても草のにほひ哉(かな) 秋田 落 山
ひとつかみ蚊遣(かやり)もくへて初月夜   徐 風
漁(すなど)りも手明になりて瓜(うり)の花   嚮 斎
鶯(うぐいす)や野風吹入窓の先   雪 貢
藪入(やぶいり)の貰(もら)ふて来るや里の梅   可 慎
遠浅やほのほの明てはつ霞(かすみ)   大 古
苗代や漣(さざなみ)よせて日の暮る   鶴 汀
見て後に聞こと多し薪能(たきぎのう)   文字 風
小御門(こみかど)のうちも月夜や猫の恋   素 山
老の手に覚束(おぼつか)なしやさし柳   御 風
鶯(うぐいす)や百囀(ももさえず)りにかゝはらす 松前 而 先
月澄(つきすめ)は露けくなりぬ麻羽織   陽 山
小男鹿(こおじか)の道も打消す畑かな   巳 有
ひと手前仕舞て聞や初蛙(かわず)   耕 雪
初午(はつうま)や村の名に呼ひと構  
汲(くみ)水に影を移して初烏(からす)   此 君
白雲の花に消込真昼かな 江差 淇 山
下萌(もえ)や垣根垣根の日の力   素 元
牛も向き車もむける恵方哉(かな)   馬 郷
朝風の凪(なぎ)待ふりや草の蝶(ちょう)   雪 暁
うしろから夜の明にけり四方拝   砂 山
流るゝは文字斗(かもめばか)りそ春の海   麁 文
眼うつりの草木もなくて柳かな 箱舘 北 崖
小屏風に見し貝のある汐干哉(しおひかな)   三千丸
草餅に栞(しおり)はさむや写しもの   几 田
初蝶(ちょう)や野はみとりなる雨上り   和 好
門松の雲に照り合ふ翠(みどり)かな   山 方
爰(ここ)かしこ風をりをりや花さかり   赤 甫
初花や夜もそれほとにくらからす   茶 瓢
晴口や柳の雪のひとけふり   三 幹
風も日もゆるむと見えて落椿   蘆 城
露の音聞か果しや夜の花   峰 女
酒あはゝ酔しる月の朧(おぼろ)かな 武蔵 亀なり
人は花連れる子供に眼のうつる   山 祐
小雨せし朝戸や終(つい)にはつ桜   遊 里
居守の木戸もゆるさす糸さくら   光 哉
みな山は同し一重のさくら哉(かな)   南 甫
怠りて朝の戸遅き燕(つばめ)かな   錦 上
枯草の雨に減り行土筆哉(つくしかな)   壷 三
手にとれはさなから淋し落椿   文 濤
明の鐘かすみの中に聞え鳧(けり)   雨 考
海棠(かいどう)や朝寐(ね)のすきて人の来る   冨 丸
舟に寐(ね)て柳の夢も拾ひけり   鶴 丈
子の世話になるも嬉しや初桜   生 徳
夕霞(かすみ)すくに朧(おぼろ)の梅もある   春 道
若草のある処斗(ばか)り雪間哉(かな)   東 雲
明る戸に近く見えけり雪のやま   山 鳥
人さとへかへす風あり山さくら   可 久
おくれしも咲と揃ひぬ福寿草   花 外
夕月の梢(こずえ)に寒しやまの梅   山 翠
春の日や蝶(ちょう)もなくさむ潮かしら   古 文字
眼心の及ぬかたも華の春   素 竹
薄墨の隈(くま)ある月や軒の梅   五 渡
空はまた星の寒さや山さくら 下毛 茂 精
吹かはる風の向ふやはつからす   和 南
蜑(あま)の子も言葉かさりて御慶哉(かな)   錦 袋
薄(すすき)らとけふり離れて遠やなき   文 文字
なる丈は我手て仕舞ふ雛(ひいな)かな 上毛 心 星
ひと工(たく)み持て鳴やむ蛙(かわず)かな   草 渉
かくまても心しつけし花の春   木 公
掛ものゝ反(そ)りも直らぬ余寒哉(かな)   琴 堂
をしまねは長き寒さの名残哉(かな)   逸 渕
たる事の初めや梅に三日の月 上総 惟 馨
鶯(うぐいす)の高音に消るくもり哉(かな) 下総 双 岳
露乾く木の間や蝶(ちょう)の羽軽き   錦 糸
飛退て鶏のうたふや桐一葉   素 月
落てある梅の莟(つぼみ)や畚(ふご)おろし 常陸 鶴 巣
御降(おさが)りや心祝ひの小酒もり   友 甫
清水くむ道のゆかしや花の中 最上 金 英
をし鳥の中もへさ(ママ)てる霞(かすみ)かな   石 鼎
蝶々(ちょうちょう)や身の重さうな雨のあと   雲 晴
伸し日に心つきけり春の雨 龍海更 一 賀
誉(ほ)めなから戸口に寄るや春の月   梅 幹
登る人斗(ばか)り見えけりはるの山   江 流
初花にこゝろ遣ひや宵の雨   旭 峰
かすむ日や草臥(くたびれ)のつく馬のうへ   中 龍

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は須賀川市立博物館に帰属します。
須賀川市立博物館の許諾を受けて福島県教育委員会が加工・掲載しています。