須賀川市立博物館図録 俳諧摺 上 -086/113page

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19 街道別俳諧摺

 五 畿 内
行列の来ぬ町かなし江戸の春   芹 舎
盥(たらい)にも寺の名見へて花の宿   梅 通
聞て寐(ね)た雨は乾きてけさの霜   黙 池
山見へて花に通ふや朝こゝろ   淡 節
里はまた寐(ね)て居る畑の霞(かすみ)かな   公 成
蝶(ちょう)ひとつ見かけて遠き渚(なぎさ)かな   赤 甫
夜曇りは田にも薬かほとゝぎす   文 海
今出来し川の中洲や揚雲雀   祭 魚
春一度着たは別なり更衣(ころもがえ)   松 郎
踏こゝろ椿と知りぬ闇(やみ)まきれ   鴈 舟
雨にあく気も引たつる新茶哉(かな)   鳥 岳
うこきやむ瓜(うり)の二葉や啼蛙(なくかわず)   有 節
初秋の朝日さしけり庭の松   此 松
春雨や夜更て晴て笑ひ声   文字 左
水見れは心うつすや秋の月   松 隣
月に行向ふ明りや雲一重   稿 處
はつ秋や日頃見る田の朝あらし   挙 一
とりわけてゆかしふ家の冬かまへ   公 眠
負ひ行や風に追はるゝ落葉籠(かご)   知 風
人近う舞戻りけり秋の蝶(ちょう)   月 人
二三羽で来ぬ後ゆかし月の鴈(かり)   素 屋
 東 海 道
呵(しか)つても子のほしかるや木瓜(ぼけ)の花   養 瓜
居こほれて井堰(せき)になくや夕千鳥   雀 叟
うくひすの退てしつみぬ竹柄杓(ひしゃく)   五 鈴
赤合羽着てたつ袖(そで)に散る椿   而 后
文字(ほうらい)にとゝいて佗(わび)し行燈(あんどん)の火   一 清
山里の寒さもなかし赤椿   李 曠
白けしや仰向く鶏の顔にちる   醉 雨
昼中の月は動かす鳴雲雀   我 竟
良(やや)暮て畑から出たり春の月   三 楓
くるゝいろもちし水田や帰る鴈(かり)   指 石
宵月や花の往来(ゆきき)になりすまし   文字 山
下池の芦(あし)また青しちる紅葉   士 前
街道へこほれかゝりぬ柳影   梅 裡
春もまた梅にのみたつ日数かな   蓬 宇
田処や蔭(かげ)ももとめす鳴水鶏(くいな)   完 伍
書初やけさは蓙(ござ)さへうつくしき   鳥 谷
連翹(れんぎょう)やよりそふ蝶(ちょう)もおなし色   杜 水
むつましや葎(むぐら)の宿も梅の花   布 丈
二三日たなひきつめし霞(かすみ)かな   西 馬
かきりある年と思はす明の春   抱 義
柴(しば)の戸や燈(あかり)にもみる春の風   祖 郷
家みえて香のあり何処(どこ)も梅柳   得 蕪
代かゆる鳥や余寒の隅田川   見 外
青柳や明はなれ行丘の家   尋 香
初空や野山にわたる大けしき   魯 心
昼はみな寐(ね)るにもあらぬ蛙(かわず)かな   芳 草
あるほとの水は氷りし川辺哉(かな)   一 夢
思ふこと言ぬそふりや春の月   香 以
木のもとはまた明ぬのに春の鳥   靖 路
春の野や明行雲の根につゝく   田 麓
をかしみもかなしみもあり鵙(もず)の贄(にえ)   巴 雪
柴(しば)棚を崩したあとや草の萌(もえ)   山 子
子(ね)の日野や引すにほしき一処(ひとところ)   四 端
つむ日まで野は寒かりし薺(なずな)かな   五 休
啼(なき)かけてそらしつみする蛙哉(かわずかな)   松 頂
ひらかねは知れぬ物添ふ初荷かな   呉 城
初雪をことしの曠(こう)や草畑   花 海
いねつむも去年(こぞ)を忘るゝひとつかな   三支雄
花守にいねと言るゝ夕へかな   白 亥
桔槹(はねつるべ)とりつける木も若葉哉(かな)   為 山
人の身にからまる春の寒かな   逸 渕
うくひすや氷を走る声の先   梅 笠
春の月寐(ね)酒ふたゝひ汲(くみ)にけり   寄 三
はなひらもまた見ぬ梅の匂ひ哉(かな)   天 由
運ふ間も去年(こぞ)とことしや鶴の足   月 杵
蝶(ちょう)の来て野こゝろうつる坐敷かな   李郷女
 東 山 道
初市や小路(こみち)にまたすから車   帆 道
挿花に見る元日の雫(しずく)かな   心 足
釣竿(さお)を持て萩見の案内哉(かな)   半 湖
朝風にふりこほす駒鳥(こま)の高音哉(かな)   琴 堂

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