須賀川市立博物館図録 俳諧摺 上 -087/113page

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濁しても濁しても春の隅田川   米 室
元日や我につとめるわか心   竹 烟
朝夕もなき黄鳥(うぐひす)のきけん哉(かな)   多代女
をれは散紅葉を人の折にけり   一 止
菜畑はさきにぬれけり春の雨   清 民
寒うても暖(ぬく)うても野は梅の花   壮 山
西へ日の廻りてぬくし大根引   樗 影
さやさやと朝風嬉(うれ)しかさり竹   静 夫
もの既に春にうつりぬ夜の静   舎 用
いちりんに春のこもるや梅の花   御 風
一たては滴て燈をひく雑煮哉(かな)   素 山
人の日を大事にそよく柳かな   文字 風
みそさゝい啼(なく)や雪ちる小柴垣(こしばがき)   文字 山
 北 陸 道
燈(ひ)は客の馳走(ちそう)や花とふた明り   a 子
声のうら聞せて猫の別れかな   大 夢
年札や枝町ことに跡もとり   丹 嶺
二三輪屠蘇(とそ)にもちらせ梅の花   乙 良
けふたつた春にはやあるゆふへかな   茶 山
蜘(くも)の囲に雨粒見へてけさの秋   竹 堂
 山 蔭 道
陽炎(かげろふ)や鴨(かも)はそろそろ丘歩行(あるき)   湧 瀧
尾長には馴(なれ)すひとむれ四十雀(しじゅうから)   青 池
 山 陽 道
其(その)うちに燈(ひ)もともりけり夕霞(かすみ)   梅 臣
月さすや流れしたいの涼み舟   甘 古
 南 海 道    
鳥たつてますますきよし秋の水   其 秀
裸火の遠あかりする若葉かな   鴎 池
すゝしさに起て月夜の蚊遣(かやり)かな   蒋 池
見て廻(まわ)るたけは日のあり萩の花   墨 雨
大空のたゝかた隅を恵方かな   鶯 居
五月雨(さみだれ)の晴間に高し水の音   菊圃女
凩(こがらし)の掃きつて行梢(こずえ)かな   黙 翁
しくるゝや今にも竹はのひる音   元 史
鶯(うぐいす)やぬかりかちなる反圃(たんぼ)道   起 月
さたまらぬ影もたのみの柳かな   ト 園
弓提た子の潜(くぐ)り入るやなき哉(かな)   月 器
朧(おぼろ)夜や思ひかけなき旅かへり   而 康
谷風に草は削れて梅の花   婦 牛
宵の雨もつて玉まく芭蕉かな   思 風
おくまりし住居のおくやことし竹   栞 陽
また人もすゝしとは見すかきつはた   北 施
峰しんと高し梺(ふもと)は文字(せみ)の声   抱 節
ひらきけり鋏(はさみ)の音にかきつはた   鯉 勢
まてしはしなき落舟をほとゝきす   栞 夫
山寺は宇治よりはやき茶摘かな   摶 外
若葉した梅一本や藪(やぶ)の中   宗 也
宵月をたよりにもする田植かな   桃 志
朝の間は人の来て居ぬ牡丹かな   三 經
団扇(うちは)のみ見へてしつかな坐敷(ざしき)かな   嵐 艸
草刈のくさにあきれる四月かな   左 郊
葉となりて雫(しずく)のしけきさくら哉(かな)   草 尺
青梅の日に日にかはる日影かな   蕗 丘
吹通す風の冷つく新樹かな   松 裡
雫(しずく)にもならぬ雨なりけしの花   非 々
卯(う)の花や濁るほと汲(くむ)井戸の水   青 葉
雲と声あとに残してほとゝきす   帆 風
朝ことに鳥の音たかし若楓(かえで)   菫 坡
蚊屋(かや)に夜を残してたつや旅の人   春 文字
竹藪(やぶ)へ割込む文字(ねむ)の小枝かな   楚 宮
野に暮て里の燈(ひ)を見る袷(あわせ)かな   龜 年
卯(う)の花や手枕(まくら)なから夕なかめ   月 古
開く日の一日ゆとる牡丹かな   逸 松
葉桜や気の隙(ひま)らしき人通り   權 居
草むらを出をしむ昼の水鶏哉(くいなかな)   得 二
はつ袷(あわせ)着なれぬ内はものさひし   梧 井
夢ひとつ見もせぬ蚊屋(かや)のはしめかな   天 馬
散残るはなも明りてほとゝきす   東 阡
翌日(あす)もこの日和はほしやころもかへ   羅 村
笋(たけのこ)や顔(かお)も洗はす見てまはる   騏 郷
雨はしくやうに見へけりけしの花   文字 城
明やすき夜に似ぬ木々の雫(しずく)かな   應 可
雨晴や身かるきふりの団扇(うちわ)売   正 孝
蝶々もいまに機嫌やころもかへ   甘 史
葉桜や鳴声かるき朝の鳥   文字 路

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