須賀川市立博物館図録 俳諧摺 上 -088/113page

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しけりあふ江尻の草やなく水鶏(くいな)   蓬 固
高々となにをしをりや竿(さお)つゝし   宇 雀
青東風(あおこち)に日も吹るゝや浪(なみ)のうへ   青 芽
提行や籠(かご)にもいれぬはつ鰹(かつお)   半 夢
若葉して墻(かき)に戻りし木槿(むくげ)かな   茶 雷
吹て来て文字(かや)にもたれつ草の風   一 外
 戊午夏
 

20 新年摺

黄鳥(うぐいす)や終(つい)そこなから靄(もや)の中   多 代
かねもなき里やゆるりと花の雲   清 民
また声もひとつひとつや遠蛙(かわず)   壮 山
窓にかけさすや隣のうめの花   文 起
雨雲にとりつく野火のけふり哉(かな)   一 宣
雨になる空のぬくみや月とうめ   春 齋
野は畑になりけり梅はもとのまゝ   静 夫
くつろきや垣の根水の来てぬるむ   佛 孫
あらためてむつみこゝろや松の内   素 磴
正月や宵あかつきの身のいとま 白川 撫 泉
春若き夜かけや雪のある処(ところ)   禾 山
江にかけの静にあける柳かな   布 山
岩はなや夕日を受て咲つゝし   童 岐
島々の空へわかれて初からす  
窓つける工夫して居る柳かな   一 翫
朝々や余寒はなるゝ竹の声   有 年
大空を出ぬけた声や初からす   北 崖
明る戸に月は残りて梅の花   和 好
船道に弥生(やよい)の空のしつみけり   山 方
野の空はひはりに明て暮に鳬(けり)   御 風
御降(おさがり)もはれて鳥なく木の間哉(かな) 秋田 撫 泉
もらひよくなりぬ何所(どこ)にも梅の花   素 山
野の池やすみれつみつゝ一めくり   文字 風
朝川のきよきか上や梅のかけ   二 葉
明ほのゝ木の間透てはるの海   大 古
囀(さえず)りや野は暮かねてくもる空   口 耳
延(のび)た日をしるや雪間の杭(くい)のかけ   玄 子
着ふるした紙衣(かみこ)さはりも余寒哉(かな)   文字 山
とちらにも梅は咲けり峠下   五 鳳
かさりたき這子(ほうこ)もありぬ雛(ひな)の前   大 夢
さゝ波におされて高し春の月   柳 壷
次第する雲雀に澄むや空と水   文 器
揚たかけ水にも消て鳴雲雀   丹 嶺
散出して人さはかするさくら哉(かな)   慶 里
花にまたあかれもせぬや肱(ひじ)まくら   乙 良
雨の戸に来て黄鳥(うぐいす)の初音かな   鷺 眠
風はやみ曲突(きょくとつ)はけふりてはつ鴉(からす)   清 水
拝領の小袖(そで)をはれや弓はしめ   契 史
浦人は花のなかめやいわし雲   市 猿
雲とまてまきるゝ花のゆふへ哉(かな)   習 静
くらかりや花に佇(たたず)む人は誰   為 雀
草もえて木の芽青みて旅を家   茶 山
黄鳥(うぐひす)や雪気(ゆきげ)にくもる朝のうち   雅 佛
かきりなき空や柳の遠けしき   大 栗
初空や庭をきよめの雪すこし   李 朗
かた山はつはきの多し村さかへ   古 棠
土手下も草履みちなり梅の花   有 信
すらすらとゆれて芽をふく柳哉(かな)   山 溶
見て居れはまはゆくなりぬ蝶と影   山 荘
山吹のさくや茶をひく臼(うす)の音   市 耕
みかくかとおもふ風ふく初日かな   山 士
との里のなこりそまたも雁(かり)の声   半 仙
茶けふりもかすみとなるや岨(そば)の家   露 牛
まちかねて起て聞けり初からす   帆 道
橙(だいだい)のころかり行や御溝水(みかわみづ)   而 后
初空にさし出る雪の古枝かな   鶴 叟
批把(びわ)の葉のひかりを吹や春の風   士 前
消さうな曇りかゝりぬ雪の比良(ひら)   梅 裡
淡雪や鍛冶(かじ)の槌(つち)音野に走る   李 曠
ちる花やふりむく度に日も傾   量 湖
枯柴(しば)に何のゆかりそ眠るてふ   醉 雨
蝶はかり空に残りてちるさくら   一 清
白魚や御清(おきよ)ところの撰(えり)のこり   星 岬
いつ春の行ともしれす神路山(かみじやま)   我 竟

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