須賀川市立博物館図録 俳諧摺 上 -089/113page

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薮(やぶ)むらに家のすくなき雪解哉(ゆきげかな)   二 鴎
拝む気かはやゆとりなり初日かけ   有 秀
立春や声ほそほそと峰の松   里 夕
ふっくりと歯朶(しだ)をしとねや鏡餅   三 楓
くるゝ迄日和や鴨(かも)のうき沈み   不 退
もらふても野心うつる若菜かな   蓬 宇
一在所笠ぬふ里やもゝの花   塞 馬
降雪の柳にあはき雫(しずく)かな   完 伍
来る春や庵にも白きいも大根   嵐 牛
文字(ほうらい)の傍に似合し老夫婦   杜 水
朝風に雲出つくして谷の梅   鳥 谷
何もまたもえぬはたけに春の雨   月 栖
皆梅となりけり今朝の雪も花   由岐雄
春の夜やにきやか過て人も来す   木 鶏
雲かけの落つく水やちるさくら   白 羽
ある薺(なずな)文字(うと)うておくも愛相かな   薫 岱
降ほとは雪もつもらす猫の恋   あやを
乗合の寐上戸(ねじょうご)おこす霞(かすみ)かな   椿 山
見渡しの木々に春立色香かな   蒼 白
元日のものにはしたり玉つはき   旭 齋
朝かけやほくるゝは花ちるは露   月 杵
あとけなき長男(おとこ)わさなり水祝ひ   喜 年
初空をはや汚しけりちきれ雲   乙 瓢
うれしさや夜の明たれは花の春   文 窓
眉(まゆ)なてゝすゝみ出けり初日の出   巣 欣
人の日もひそかに暮て松の月   優 々
草の家もわすれすつけて初からす   梅 谷
谷そこの花吹あけるゆふへかな   よし香
かたかけやひとり気高く花を友   天 由
野へ袖(そで)をひかるゝ朝やはるの風   花 外
小松野や葉に盛るほとの春の雪   五 渡
つくつくと摘人まつやつくつくし   逸 渕
先々か梅なり峰に日のにほひ   溪 齋
池ひとつむかふにおきぬ若菜籠(かご)   曲 川
羽やすめとみえて麦ふむ雲雀哉(かな)   姑 山
露霜やふめは音ある笠のほね   如 草
去年から咲てふるひす梅の花   桃 五
自剃(じてい)して出る気になるや御忌(ぎょき)の鐘   寉 石
元日の人かけさすや草の庵   白 亥
乗合やはなし上戸(じょうご)は傀儡師(かいらいし)   鳥 岳
恵方にもかきらすうれし向ふかた   野 井
畑打やあたまのうへに山の道   乙 也
家のたつもやうのみえる野梅かな   未 足
塵(ちり)塚のうはもりにちるさくらかな   梅 通
何を着てなに履て出ん小松曳(ひき)   公 成
黄鳥(うぐいす)や飛時ちさくおもはるゝ   波 同
畔(あぜ)道やしらぬ礼者のゆつりあひ   黙 池
薬子のひかへて居るや几帳(きちょう)かけ   九 起
梅はやし日の暮おそし梺(ふもと)寺   碩 水
御降(おさがり)や場にちらかる塗木履   露 川
打火にも勢ひみえて花のはる   奇 泉
わすれ井や梅をかさしの薄けふり   自 長
居まはりは水田はかりや春の月   雪 簫
一里にあまりて野にも梅の花   赤 甫
元日の種火や灰も入かへて   淡 節
立なから茶を手にのせて遠柳   有 節
見ぬ時も只(ただ)おもしろし花さかり   芹 舎
声ほとは羽ちからみえす揚雲雀   林 曹
弓引に出るや芝生の朝かすみ   素 屋
垣せねは庭にも下りるひはりかな   文字 左
鳥風の遠き空ふく霞(かすみ)かな   松 隣
いそかねは道もふみよし梅の花   潮 水
門松や鎗(やり)くゝらせるひとひねり   知 風
黄鳥(うぐいす)や川飛々に島はたけ   稲 處
酒の香ののかぬ板間や松のうち   養 爪
初東風(はつこち)のふくや二見の岩に注連(しめ)   雀 叟
もてなしの過て物うし花の宿   黍 丘
長閑(のどか)さやそよそよ風のありなから   可 樵
水にまた影のさゆるや春の月   湧 瀧
鄙(ひな)ふりやはたらきつるゝ若菜籠   玉 骨
雲板(うんぱん)のひゝきに落るつはきかな   糠 子
うくひすや来たとおもへはすいと去(い)ぬ   糠 人
行雲や月は朧(おばろ)のそれなから   可 大
雀子(すずめこ)や先(まず)飛たけの羽つくろひ   醒 花
人の来る愛相も出来て庵の松   西 坡
初夢を見て心よくわすれけり   古 谷

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