須賀川市立博物館図録 俳諧摺 上 -090/113page

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伸さうな枝のそよきや糸柳   北 梅
眠る間もすれあふ鴛(おし)のつかひ哉(かな)   梅 臣
一折ておけぬ暦の見そめかな   樗 山
黄鳥(うぐひす)にかまはすに鳴すゝめ哉(かな)   麦 紫
磯(いそ)に人うらゝかな日と成にけり   一 化
一調子あるや雀(すずめ)もはるの声   亭 々
積柴(しば)をくゝり行けりはるの水   麦 鳥
我声の谺(こだま)したふや猫のつま   左 一
初空も□と口けり浅口原   羅 村
おほろ夜や薮(やぶ)根にすける水明り   應 可
磯(いそ)の海苔浪(のりなみ)もひまあるにほひ哉(かな)   蟻 城
暮る空見あけるかたや松に藤   蓬 固
つまついた木の根も花のゆかり哉(かな)   半 夢
涸(かれ)川を覆ふて青む柳かな   騏 郷
水にうく影猶(なお)さらや若みとり   宇 雀
夜の雨をあます棚田や雉子(きじ)の声   菫 坡
すみすみて沼田に入るやはるの水   文字 路
養父(やぶ)入やものなつかしき腰扇   帆 風
枯芝にすへる草履やうめの花   草 尺
蕗(ふき)に雨こゝろみに茶もひとりかな   青 芽
炉ふさくもけふをなくさむひとつ哉(かな)   嵐 艸
此(この)ころの日さしや窓に梅のかけ   抱 節
すき間なく固むや鉢の梅の花   茶 雷
月ははやおしうつりけり遠干潟   文 居
黄鳥(うぐいす)や柴(しば)ふね流し流しゆく   鴎 池
梅か香や窓からみゆるあすの空   雲 外
はや年の汚れみせけり注連(しめ)の内   烟 波
庭木まてうつすや笑ふ山つゝき   松 堂
安らかに花もみめくる小舟かな   麦 翠
伊勢よしのゆかしくおもふ日のはしめ   習 竹
次の間や早元日のぬきちらし   婦 牛
春の空はやとゝのふや日の出前   元 史
一けしきまたそふ鐘や月と梅   卓 郎
価なきものゝ尊しはつ若菜   永 壷
にきはひをふくむ閑(しずか)やけさの春   露 心
手くりした膳(ぜん)もまたせてきそはしめ   永 機
梅さくや跡なくなりし宵の雪   可 尊
日の出まつ人や潮(うしお)のはつ手水(ちょうず)   梅 笠
戸もひかて飯くふ家や雨の雉子(きじ)   新 甫
おもふ事ない時に見る柳かな   貫 乎
蕗(ふき)の芽やきのふ売たる臼(うす)のあと   陳 良
黄鳥(うぐひす)も来よいと見へてひとへ垣   芦 城
苗床や咲て久しき福寿草   宇 山
むれ出すやその日その日の春の鳥   みき雄
梅白しさゝ波□ひるはしり枝   蜂 山
我庵や七草粥(かゆ)の手一合   海 了
賞美した跡すてやすし蕗(ふき)のたう   普 陽
谷々や春にしたかふ水のおと   弘 湖
冴(さえ)かへる空やほとけて梅の花   文字 父
風さそふ人の袂(たもと)やはつかすみ   芳 艸
揚なから雪水ほすやいかのほり   太 年
初空やむかふかたより日の匂ひ   然 々
昼過の氷りをおすや流れ藁(わら)   松 頂
海山とわかる際より初からす   甘 茶
空豆の二葉や門のはつかすみ   荷 少
おもしろき日数ふくみて梅の花   五 休
ひとつ葉も草木はしれて神の春   樹 石
山里は何に遊ふそはなのはる   波 文字
しほらしき羽に似ぬ蝶の往来哉(かな)   卜 早
身に過し初夢もなし草の宿   抱 齋
揚おろす雲雀や見つゝ人も行   完 鴎
手にとりて燈(とも)しをまつや懸想文(けそうぶみ)   瓦 村
かと明る空に辞宜(じぎ)してけさの春   苣 麿
薺(なずな)うつ音ひと冴(さえ)や朝またき   不 染
膝(ひざ)の塵(ちり)はらひに立や垣かすむ   尋 香
文字(ほうらい)にむかふや膳(ぜん)につくいとま   等 栽
山際や筧(かけい)の台を梅の中   見 外
こゝろより青みおよほす柳かな   抱 羲
そむくのも春のすかたや鴛(おし)の中   香 以
春風の懐(ふところ)ぬけるぬるみかな   香 芸
遠山や柳につゝく春の色   泰 山
なかぬ間を鶯(うぐいす)人に見られけり   五 雀
人かけに花影さすや夜の梅   桃 人
雨はれや川の左右の揚雲雀   芦 月
鶏にこゝろしつめて初からす   留 我
七草やさゝやかつゝてありあまる   青 々

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