須賀川市立博物館図録 俳諧摺 上 -091/113page

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そふ雲のひとへに足らす春の月   永 年
ゆるむ間のありて久しき余寒哉(かな)   良 可
海苔(のり)好む人の淡さもしられけり   甘 志
莨(たばこ)吸ふ藁(わら)火に梅のうるみけり   得 賀
ひとさかり過て静な梅見かな   如 白
よき日のみ拾ひよみしてはつ暦   祐 之
白魚やはねる力も網のうへ   世 員
梅をれはのそりと出すや馬の顔(かほ)   素 渕
家はみな梅にかくれて里ふかし   佳 節
元日や住よきこゝに年ふるく   龜 稗
ふしくれもいつ雪をれて柳かな   宗 普
明るみのさす空窓や初からす   如 泉
見聞ものむつまぬはなし花の春   巨 椎
田をへたて畑を隔て梅白し   芳 泉
元日も曠(ひろの)に榾(ほだ)たく在処(ざいしょ)かな   研 月
人行は鶴たつ島の恵方かな   古 友
窓先に流れももちてさし柳   楽 山
にきやかな日の暮やうや松かさり   岱 々
黄鳥(うぐひす)や朝とゆふへとふたところ   處 山
梅か香や里も小むらも人通り   由 地
如月(きさらぎ)や野は一はいに草のいろ   南 交
養父(やぶ)入の伏をするや隣の子   梅 雅
なつかしき一夜ふた夜やかへる雁(かり)   鳩 園
行儀よく幹をはなれて落椿   無 名
鶯(うぐいす)によりそふ柱はなれけり   閑 水
書のしや文字(うた)ひものとて海苔(のり)五枚   太 a
里の花夜はしつまりて犬の声   梅 處
行はゆく先に広かるかすみかな   芳 一
巣の鳥の親子そろへは暮にけり   桃 宜
畑うちのいそくともなき手ふり哉(かな)   霜 眉
東風(こち)ふくや舟からもとるわすれ物   湖 崖
黄鳥(うぐひす)やおもひもうすぬ日の初音   槇 合
もてはやす四五りんの間や梅に雪   大 鵬
山ふきに口そゝき行なかれかな   雪 年
雲雀なく空のうつるや川手水(ちょうず)   青 柿
二つさくひとつはのひて福寿草   山 文字
まつうちの日数もたのし梅の花   きく雄
袖(そで)をふく風は冷たしはるの月   可 嘯
乙鳥(つばくろ)に逢ふもたよりの野道哉(かな)   花 海
曲る瀬にしつんてはうく椿かな   三 交
江にならふ柳も雨のすかた哉(かな)   為 山
黄鳥(うぐひす)や鳴ては雪のふりきゆる   山 子
  庚申春 鴎波書 

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