須賀川市立博物館図録 俳諧摺 上 -092/113page
21 歳旦摺
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春を得し市のもとりや年のうち |
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蓬 宇 |
懸乞(かけごい)に句を聞れけり草の庵 |
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鳥 谷 |
豆打のさし直しけり床の花 |
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九 起 |
年や今朝にもしたし夜もをしゝ |
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抱 羲 |
みえて居る春をあつかる柳かな |
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好 以 |
小原へのたよりも年のなこりかな |
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淡 節 |
もてはやすとしやなしみの穂長うり |
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祭 魚 |
月花の世なみもうかふ岡見かな |
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月 杵 |
すゝはきや庵はとしとし人まかせ |
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氷 壺 |
浴(ゆあみ)して寐(ね)まるはかりの師走かな |
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葱 玉 |
人の老うらやみつゝも年をしむ |
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完 鴎 |
かそへ日を山家は宵寝あさねかな |
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甘 茶 |
春をまつこゝろ庭木にうつりけり |
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凉 花 |
世はせはし行はかへりて年の波 |
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一 宣 |
行先にあるかとはかりとしの関 |
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御 風 |
よい先へうられる馬や年のくれ |
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赤 甫 |
春をまつ鳥の夜燭(やしょく)や雪明り |
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積 翠 |
庭木まて春の来にけりとしの内 |
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一 龜 |
松明(たいまつ)ふりて下りる干潟や除夜の海 |
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逸 史 |
箔打(はくうち)の夜ふかす音にとしのくれ |
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不 染 |
年波やかへりしあとに心つく |
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苣 麿 |
年木つむ軒や朝からよい日和 |
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喜 年 |
わか庵や宵から寐(ね)るを年わすれ |
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弘 湖 |
行燈(あんどん)を真中にして餅(もち)むしろ |
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几 藤 |
節季候(せきぞろ)やとなりももたぬ家に来る |
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慶 里 |
鯲(どじょう)まてをとらせてありとしの市 |
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鶴 叟 |
買うたれはさしてくれけり柳うり |
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契 史 |
餅(もち)花の影にきやかな焚(たき)火かな |
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婦 牛 |
月あらは猶(なお)寢られまし除夜の空 |
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風 |
水に顔あらふてもとる岡見かな |
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久 栄 |
かさね着の長しみしかし年男 |
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五 鳳 |
世のさまを見に出はやな大三十日(おおみそか) |
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みきを |
買う人の声は聞えすとしの市 |
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野 井 |
庵の煤(すす)日和まかせにはらひけり |
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鱗 三 |
臘八(ろうはち)や年に稀(まれ)なる山日和 |
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可 尊 |
月のある事をわするゝ師走かな |
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三 徑 |
行年のいとまや梅を嗅(かぎ)て見る |
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秋 夢 |
大三十日(おおみそか)書院はつねの活火(かっか)かな |
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花 海 |
誂(あつらえ)のある足とりや葉竹うり |
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拾 山 |
掛とりの膝(ひざ)にも来るや庵の猫 |
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公 成 |
日や月や行かふ中のとしの暮 |
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清 民 |
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鴎波書 |
印 |
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名残とて雪も降なり大三十日(おおみそか) |
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多代女 |
何ひとつなす業もなく年忘 |
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為 山 |
節季候(せきぞろ)の見かへり行や己かかけ |
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一 清 |
眠る鶴師走のさまを放れけり |
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渓 斎 |
年木つむ門のけふとも成にけり |
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新 甫 |
夕空や柳のほかはとしの内 |
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菊 雄 |
寺町やよその師走を立はなし |
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巣 欣 |
松竹を一はん筆やとしの市 |
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雲 底 |
うれ残るものひとつなし年の市 |
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旭 齋 |
峰々の雪も散らすか除夜の鐘 |
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董 坡 |
捨た世を世かすてさせす大晦日 |
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祐 之 |
おもしろく通り過たりとしの関 |
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草 波 |
行年はゆくやゆるりと大いろり |
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薫 岱 |
傘かりによりてゆるゆる年わすれ |
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黙 池 |
三尺の庭に春まつ住居かな |
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波 同 |
餅(もち)花やをさなく見ゆる枝くはり |
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梅 裡 |
春ちかくなるや炭火の匂ひまて |
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龍 湖 |
馬駕(かご)の世話にもならすとしの坂 |
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逸 渕 |
年の瀬へ乗こむ春の荷舟哉(かな) |
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二 鴎 |
雪浴て切たといふや葉竹売 |
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半 夢 |
年の瀬も安しこゝろの楫(かじ)ひとつ |
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芳 草 |
辛酉春 |
圭岳道人写 |
印 |
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