須賀川市立博物館図録 俳諧摺 上 -093/113page

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22 新年摺

春ことにいろをふかめて千代ろつの
 みとりいやます松そさかゆく   景 福
 
君か代はなにうきふしもなよ竹の
 千ひろの影そ豊なりける   剛 長
 
出る日の光りとともにくもりなき
 君か御代をは仰かるゝ哉(かな)   成 教
 
恵方へとつるもふみ出す初日かな   南 渓
笹たけもかゝる雲なし初日の出   碧 梧
飛上るほとに嬉しやはつ日の出   東 秀
手遊ひや踊るも見るも春こゝろ   春 洋
しら梅のうしろたてありふく寿草   文 洋
はつ日かけおしひろかりて御代の春   十 青
咲そめる梅にあさ日の昇りけり   一 壷
おしなへてまつもろともや君か春   幽 才
静なる夜の明ふりや御代(みよ)の春   止 哉
花にめて名は猶(なお)とみてふく寿草   清 泉
はやはやと不二にうけたる初日哉(かな)   翠 竹
たくひなき色を含むやふく寿草   一 瓢
遠眼にもまかりぬ梅のつはいかな   才 女
末広く松の旭(ひ)の出やけさの春   里 水
名にし逢(おう)ときはの松やはつ日の出   雲 涯
あたらしき筆とりあけて吉書哉(かな)   連 丸
わか水やくみこゝろよき筧(かけい)口   董 堂
ひらく戸や野山もけさの春心   伯 山
初日さすときはの松や新しき   如 木
ありかたき御代かさねけり鏡餅   醉 石
雪野から霞(かすみ)そめけりけさの春   桃 孫
文字(ほうらい)や松のおくから鶏の声   伯 楊
春立や珍重ちんとなく雀   子 毅
昇る旭(ひ)に香のとはしるや梅の花   鬼 松
 
千代千代とすゝめの声も君か春   江 三
民くさの殖るかまとや君か春   奇 外
太箸(ふとばし)のにほんめてたきはしめ哉(かな)   江 居
鶯(うぐいす)やいちにちたけの声のはり   清 友
万歳に聞はやつるとかめのとし   呂 三
手をついて見とるゝ花や福寿草   双 蝶
晴たれは道の広さやはるの山   久 笠
ときは木にさすもつたひや初日の出   三 鳥
初空や雲井はるかに鶴の声   玉 露
相生の松のみとりやけさのはる   壽 三
元日やものいふ声のあらたまる   友 月
君に猶(なお)松のよはいやかさり餅   月 下
戸明れは隈(くま)なき空や初日の出   石 曠
文字に移る旭のちから哉(かな)   長 水
川添や光りさし来る今朝の春   其 竹
世は竹のすかたになりて君か春   千 鶯
文字に世の常ならぬ初日哉(かな)   羽 扇
初空や常には見へぬ不二の峰   雲 香
限りなく海もたひらや初日かけ   龜 遊
元日や鶏の声にもくもりなき   江 栄
つるかめも来てもふ春の御庭哉(かな)   三 思
祝ふのも猶(なお)万歳のはしめかな   蓬 節
てらてらと四海にわたるはつ日哉(かな)   島 雪
はつ空のみとりに清き流かな   江 文字
初鶏にたゝしき明もまたれけり   紅 鳥
眼たゝけは海をはなれて初日の出   三 喬
 
初空や不二を真うけに旭(ひ)の昇る   呉 陵
色ふくむ根に力ありふく寿草   篁 廬
松に旭(ひ)の粧(よそお)ひ深き子の日かな   樵 晦
春深く色添松やとこしなへ   乙 雄
はまゆみの矢さきに敵もなかりけり   雄 節
文字に積かさねてや俵のし   文 裡
 
万歳は君のめてたさかそへけり   江 仙
今開くけわいや千世の玉椿   一 橋
 文久弐壬戌春

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