須賀川市立博物館図録 俳諧摺 上 -094/113page
23 多代米寿賀摺
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去年の秋寿盃に自祝のすりものを |
そへて呈しけるに諸君追々賀章を |
賜りぬ是をたゝにひめ置かんはその |
芳意をなみするに似たり依て上木(じょうぼく)す |
その賀章におのおの前書あり文大 |
むねひとしけれは吐略(とりゃく)し侍(はべ)る且 |
懇ろなる書音(しょいん)に品なとを賜へるも |
あなれと賀章なきものはすへて |
相もらし侍りぬ |
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百(もも)とせもふくむよはひや松かさり |
越後
七十七老 |
乙 良 |
千代かけて米(よね)のはるたつたよりかな |
下毛
七十老 |
其 翼 |
我も我もあやかりたしと千代のはる |
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夫 山 |
八十八(やそや)とせ見てさかり也姨(なりおば)さくら |
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成 章 |
蓬や米(よね)の真砂(まさご)の数しらす |
上毛 |
半 湖 |
老の手にふれし小松をもらひけり |
下総 |
得 来 |
米寿をふたゝひ賀す |
此(この)うへの老さき祝ふ穂長かな |
江戸 |
為 山 |
ある中や女松すくれて若みとり |
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等 栽 |
若みとり猶(なお)いつまてか松の丈 |
武蔵 |
壽 道 |
幹寂(さび)てくつきり青む柳哉(かな) |
遠江 |
清 皐 |
年の数よまん松の葉梅のはな |
名古屋 |
梅 裡 |
百(もも)とせは今の事也(なり)花のはる |
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指 石 |
社盟を会して表一順におのおの |
賀章をすりものにしておくり |
賜はりたる南雅の句を挙 |
かそふるや人のとしまて店卸(たなおろし) |
京 |
東 樹 |
升(ます)なからいたゝかれけりとしの豆 |
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赤 甫 |
遠境よりおくり給(たま)はりし |
酒鐘は筐(かたみ)の中にて |
盃(さかずき)はくたけてまゝと千々のはる |
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公 成 |
もりあけて年の花也(なり)あらひ米(よね) |
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淡 節 |
蓬や老の盃(さかずき)とりかはし |
難波 |
潮 水 |
米(よね)のうへよはひも積てはつ荷舟 |
丹波 |
湧 瀧 |
めてたさのならふものなし米(よね)のはる |
土佐 |
雲 外 |
色かへぬ松を又々はるの友 |
加賀 |
大 夢 |
その米(よね)の末たのもしや種卸 |
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丹 嶺 |
月花は老せぬ門の薬かな |
越中 |
慶 里 |
花鳥もあやかるほとのよはひ哉(かな) |
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巨 川 |
喰(くひ)つみの米(よね)をことふくいはひかな |
信濃 |
雪 麿 |
佐保姫(さおひめ)にいくつおとりのよはひ哉 |
出羽酒田 |
鳳 湖 |
いつまても幹は丈夫に梅のはな |
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雷 山 |
穂たはらを積かさねてそ米(よね)のはる |
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一 志 |
かさね着の裾(すそ)まて若しよねの春 |
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竹 堂 |
年を経る松のみとりや老の門 |
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羽 哺 |
初はるの百(もも)とせちきれ小さかつき |
津軽 |
素 更 |
いつまても蒔(まき)てふやすや米(よね)のたね |
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虚楽坊 |
ことの葉も精(しら)けんうへや米(よね)のはる |
松前 |
風 逸 |
松風の涼しき命いつまても |
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古むら |
若みとりしておく深き構かな |
函館 |
葱 玉 |
みとり立柳に風のひかりかな |
仙薹 |
河 玉 |
蓬(ほうらい)の山を見こしや床の不二 |
白石 |
雄 節 |
松の影さすやいよいよ日の長き |
二本松 |
丁 酉 |
ありとある中の一木(ひとき)や梅のはな |
下太田村 |
児 川 |
花鳥にとしをかさねて米(よね)のはる |
富田村 |
粂 女 |
老る木は松も少しよねの春 |
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松 月 |
年とらぬ人はなけれと米(よね)の老 |
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黙 斎 |
かきりなき齢(よわ)ひなつかし米(よね)のはる |
会津 |
布 山 |
老松やまた若竹につやひとし |
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大 鵞 |
出来秋や先試る米(よね)の賀寿 |
白川 |
素 磴 |
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よろこひのますみの鏡千代かけて |
おも替りせぬ影やうつさむ |
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資 昌 |
八十(やそ)あまり八とせを千代のはしめにて |
猶(なお)行末のはるかなるかな |
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佛 孫 |
暮てゆくとしを明れは米(よね)の春 |
千代の齢(よわ)ひをまつのことの葉 |
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千恵子 |
陸奥(みちのく)にありといふなる武隈(たけくま)の |
松より君か名こそ高けれ |
函館 |
彰 常 |
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うら若きとしや八千代の玉つはき |
当所 |
白 亥 |
米(よね)の賀や雪の中なる芹薺(せりなずな) |
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壮 山 |
百(もも)とせをかさねん松のみとりかな |
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文 起 |
高々と積し俵やことし米 |
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静 夫 |
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