須賀川市立博物館図録 俳諧摺 上 -096/113page

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24 其柳米寿賀摺

なけは啼(なけ)空となりたり時鳥(ほととぎす)   公 成
人のあく雨にきけんの水鶏(くいな)かな   有 節
通し鴨(かも)老た鳥にもなかりけり   九 起
葉さくらや立添ふ人のわひ姿   文 海
朝の間に池を廻(めぐ)るや梅もらひ   桃 五
わさと来る人は稀(まれ)なり若楓   五 律
野に通ふ手拭(てぬぐい)しろし春の風   寉 石
つけてある丸太つなくや春の水   倚 柱
日は空に声やゝ遠し閑古鳥   赤 甫
はさまりし柳か愛し屋根の石   黙 池
麦秋や早うはあれと昼はたこ   淡 節
年ことに見るや小松の曳(ひき)残り   梅 通
佇(たたずめ)は黄鳥(うぐいす)なくやきしのまつ   文字 左
蛤(はまぐり)や海見ぬ里も行わたる   潮 水
笠縫か背戸の灯に来て啼水鶏(なくくいな)   素 屋
草の戸の古ひも見えすうめ柳   春 右
霞(かす)む中歩行や船にのる心   鶴 巣
あたらしき方か次郎の幟(のぼり)かな   九 峰
是といふ高い木もなし霞(かす)む里   梅 裡
佇(たたず)むや柳見て居るひとりより   一 清
雲踏てのほる峠やほとゝきす   三 鴫
黄鳥(うぐいす)や手せまき宿もたのもしき   李 曠
散くちの□ら□ら明て花さかり   而 后
垣外の梅を小庭のなかめかな   完 伍
おほろ夜やなてられさうな山斗(ばかり)   春 芙
暑き夜や川の中洲に火のみゆる   蓬 宇
立春の何より早し人のうへ   嵐 牛
よき人の杯(さかずき)もらふ子(ね)の日哉(かな)   杜 水
楪(ゆずりは)や日あしは去年(こぞ)のまゝなから   □□□
口□□口□口口□□口□□□□   □□□
花に鳥仮そめならぬちきりかな   立 宇
黄鳥(うぐいす)の声にはるゝや蒲の雨   旭 齋
封切て初日をうける扇かな   可 候
春雨や窓たちしたる筆つかれ   喜 年
夕空をふつくり冠(かぶ)る柳かな   月 杵
暁や近う見えたる春の山   一 澄
いつ見ても古き住居やむら木槿(むくげ)   たよめ
里の火に向てならふや夕蛙   清 民
垣こしの話受けり春の月   壮 山
なけはこそ是も友なり閑古鳥   白 亥
水音や心のひまをかんことり   一 止
出代(でがはり)の宗旨もあひし笑顔哉(かな)   江 三
歩行よき日中の雨や行々子(ぎょうぎょうし)   草 居
横に寐(ね)る工夫はないか浮かはつ   御 風
啼処(なきどころ)道よりひくし閑古鳥   悠 平
元日やはなれて居(すわ)るはしら際   市 猿
気ほときに経者ものそく牡丹哉(かな)   鷺 眠
香はしりて道のつきけり岨(そば)の梅   為 山
朝風呂にほんのり屠蘇(とそ)の匂ひ哉(かな)   卓 郎
ゆたゆたと鶴舞つれて初かすみ   不 染
張出して梅にさはらす中二階   五 休
遠山を今こしさうや郭公(ほととぎす)   明 水
年々や島はひらけて麦の秋   潮 堂
打かへす波のあとよりはつ霞(かすみ)   伴 夢
三つの朝人にひとつの心かな   可 尊
梅の下掃くも年経ぬかゝみ腰   太 年
初日影海山遠くなりにけり   菊 雄
朝けしきいけるはかりの飾海老(かざりえび)   等 栽
冬越しや夕黄鳥(うぐいす)のもらひ啼   見 外
雪掃て板ならへけり梅の中   氷 壷
文字(ほうらい)に吹はしめるや家の風   春 湖
正月やなくてかなはぬ菜大根   き を
むつましやひと間はとその飾りつけ   苣 麿
明やすき夜は寐勝手(ねかって)もなかり鳧(けり)   四 端
黄鳥(うぐいす)やせまい庭とはおもはれす   然 々
ういてある畑の土やうめの花   芦 城
吉方(えはう)かと問るゝ道や薄草履   貫 手
朝風呂や柳くゝりて入る処(ところ)   野 井
花の春人も若木のこゝろ哉(かな)   新 甫
寒いほと梅か香たつや日の出前   露 心
ころ柿の歯にしむ朝や梅の花   思 楽
若水やわけて吹井の扱(くみ)こゝろ   五 雀
わたぬきや汐(しお)さし来ねは船も出す   竹 東
雪の野や若菜をけさの初みとり   草 波

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