須賀川市立博物館図録 俳諧摺 上 -098/113page

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  自 賀
米の春こせとまた有としの坂   其 柳
幾春をかさねる松や老の友 其 桃
彦はえもさそふて戦(そよ)く柳かな 清 玉
  老父の賀章たゝに机にのみおかんも
  本意なきものから後をしのふの咄(はな)し
  くさにもと四方(よも)の秀調をもともに
  梓(あずさ)にちりはめてしたしみの深きを
  願ふになん
いつとなく日数かさねて笑ふ山   渭 川
 葵亥春 鴎波書 印
 

25 新年摺

御降(おさがり)も神のそはえや松か崎   梅 通
飲て出た酒もほんのり野のかすみ   淡 節
うめかゝにはしりつきけり向ふ風   波 同
鶯(うぐいす)の来て引出すや野のみとり   鳥 岳
うら白や敷もかさるも遣(つか)ひはれ   文 海
飼鶴のふりむきもせぬ初日かな   もくち
幹はまたくらき夜明の柳かな   素 屋
雨たれをよける葉もある椿(つばき)かな   潮 水
船見えて沖へもかよふ小てふ哉(かな)   文字 左
暮々や水田にしろき梅の影   梅 裡
つみなから松葉をふるふ若菜哉(かな)   一 清
田の水にうつるものなし夕霞(かすみ)   流 翠
のりそめやひと嘶(いななき)きは文字(うまや)のうち   羽 洲
渦をまく水やこまかに春の雨   士 前
このころの眼にふれやすき柳かな   完 伍
笹(ささ)くゝり来るやすらすら春の水   嵐 牛
日々咲てへらぬ莟(つぼみ)やうめの花   青 溪
夕空をふつくり冠(かぶ)る柳かな   月 杵
元日や誰も来ぬ間の茶一ふく   他 山
呵(しか)り人のいねは折れす梅の花   可 候
山ひとつあらひ出してはるの雨   喜 年
元日の男ふりなりすまひ取   栞 堂
金屏(きんびょう)のにらみにおけや福寿草   乙 瓢
日のかけの広うひろかる柳かな   文字 呂
早寐(ね)するほとに日もへて松の内   巣 傾
水鳥の初日に向てなかれけり   潮 産
きし鳴て行先見ゆる夜明哉(かな)   多 代
黄鳥(うぐいす)や隙(ひま)な身ほとに聞おくれ   風 止
さゝ波をたてゝはぬるむ水田かな   此 一
去年(こぞ)ついた堤にもさくすみれ哉(かな)   文 貞
うくひすや飛々ましる瓦屋根   山 方
呼接(よびつぎ)の枝のさきなり虫の売   鷺 眠
初そらや左右へちり行峰の雲   素 山
万歳や親子はなしに里わたり   大 夢
くもる日は猶(なお)香の深しうめ林   左 一
降あかる雨の間もなう霞(かすみ)かな   哲 外
しのゝめや霞(かすみ)むかたよりわたる風   完 鴎
落ついた噺(はなし)うつりや春の雪   正 仰
年礼も只(ただ)一日の小村かな   凉 花
山もとや柴(しば)おく洞にうめの花   溪 齋
文字(ほうらい)にひと膝(ひざ)すゝむ会釈哉(かな)   卓 郎
咲たれはそれも梅なり宮柱   等 栽
はつ霞(かすみ)たつや思うた処(ところ)より   芳 草
晴きらぬ月も又よし梅柳   草 友
啼(なき)わたる鳥や海より明の春   草 甫
雨気(あまげ)もつ鐘や雉(きじ)なく桐畠(きりばたけ)   卜 早
しる家の前も通りて吉方哉(えほうかな)   波 鴎
空近う思ふ向ふのやなきかな   苣 麿
万歳の下戸めつらしう思ひけり   伴 夢
門松にあるしは留主(るす)か宵月夜   蘆 城
てらてらと日の影うつる柳かな   可 尊
梅さくや棹(さお)さして見る池の舟   留 木
黄鳥(うぐいす)や聞人ありと思ふふり   皷 汀
三日月は消て地声の蛙かな   呂 風
枝ふりは接木の後の工風哉(かな)   只 青
うくひすや雪吹ちらす日和風   五 休
鶯(うぐいす)の音に春の日のうつり哉(かな)   稔 布
水靄(もや)に枝先うつむ柳かな   蘭 操
ころ柿の歯にしむ朝や梅の花   思 楽
凪(なぎ)てから薄う日のさす柳かな   永 年

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