須賀川市立博物館図録 俳諧摺 上 -099/113page

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海苔(のり)あれは乏しうもなし雨の宿   甘 志
いねつむや日和のよきをほめた後   氷 壼
啼(ない)て後風のうくひす飛にけり   新 甫
太箸(ふとばし)や手にとらぬ間のひと風情   春 湖
入るとて袖(そで)をせはかる手まり哉(かな)   野 井
初鶏やしすましたりと諷(うた)ふさま   太 年
濃過れは屠蘇(とそ)も文字(あか)るゝ柳哉(かな)   香 以
わひしさの日ことにかはる霞(かすみ)かな   尋 香
手近くの梅つまみ込雑煮かな   永 機
何となくくゝりて見たし夕柳   露 心
のこる雪汁の実さかす畑かな   如 白
松過た宿のゆとりの朝寐(ね)かな   潮 堂
市中や人声からも春のたつ   禾 暁
醉た眼にいよいよ赤き椿(つばき)かな   桐 齋
勝手にも一鉢見えぬふく寿草   雪 年
むつましき風と柳のそふりかな   山 台
御さかりの有しゆとりや鐘の声   草 仙
草木より深きみとりや初御空   芳 泉
ひる月のちひさく出たる余寒哉(かな)   弘 美
わか水の雫(しずく)うれしき手先かな   可 嘯
鶯(うぐいす)の垣飛こしてくれにけり   ミき雄
梅の花紅葉の後の遠出かな   花 外
雪ちるや猫のかよひ路見ゆるほと   貫 乎
香はしりて道のつきけり岨(そば)の梅   為 山
  閑居幽事多
うくひすや思ひよらさる風の中   きく雄
ちさくとも庵は持たし初日影   聞 賀
 発亥の春 素阿書  印

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