須賀川市立博物館図録 俳諧摺 上 -100/113page

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26 露心新居賀摺

杉間から折り出しけり畚(ふご)おろし   梅 通
鶏なくやはや見へわたる田の氷   公 成
袖挨(そでほこ)り払ふて這入(はいる)礼者かな   九 起
結ふ間もとくとくといふ清水かな   蒼 山
あせ豆のかいわりみへて五月晴   五 律
薮人(やぶいり)の珍らしかるや川手水(ちょうず)   鳥 岳
山間や霧はわら家の上をふく   淡 節
雨水の日を吹とるやはつあらし   黙 池
稲妻や人気やしなふ宵の風   有 節
草の戸やさうふ葺(ふく)にもよい高さ   文字 左
老の手にひとつ縫けり屠蘇(とそ)袋   知 風
枯野吹く空の限りやつく波山   田 美
人里のみへてなかるゝしみつ哉(かな)   潮 水
山の外隈(くま)なき海の初日かな   梅 圃
来て見れは早友のあり朝桜   蘭 操
与所(よそ)の子はみなよく見ゆるをとり哉(かな)   挙 一
かち渉(わた)りして猶(なお)暑き堤かな   素 屋
立時におほへたまてそ屠蘇(とそ)の醉   梅 裡
梅折るや外にまきるゝ音もなし   一 清
はつ蝶(ちょう)のいてしあたりか草の色   羽 州
卯(う)の花やわたり瀬問ひに立もとる   棗 地
庭先は隣の蔵や批把(びわ)の花   乙 也
曳はさてなかなか重き鳴子哉(かな)   九 峯
引先に夕雲かゝるなるこかな   嵐 牛
藤の実の天窓(あたま)にさはる清水かな   杜 水
透間なく春をふくみしやなき哉(かな)   蓬 宇
実に撓(たわ)む海のわか葉や朝日和   完 伍
端山路やほつと二列のわすれ咲   麦 鳥
はつ虹(にじ)や鴛(おし)も囀(さえず)る柳かな   □ □
雉子(きじ)は鳴水は流れて野は静   橘 外
岸すゝし柳はさみて並ふ家   草 尺
遠山やかすみしまゝの夕月夜   半 夢
ぬけ道に垣結(ゆ)ふてあり梅の花   禾 田
くもる日は猶(なお)香のふかしうめ林   左 一
木つゝきの覗(のぞき)て行ぬ藁(わら)ひさし   ミき守
雪若菜見人と摘人とわかれけり   薫 岱
無事てまた顔見せられよ花の主   一 山
をしけなく人中通る角力(すもう)かな   田都二
人足は常にかはらす秋のくれ   白 羽
朝晴や雪に埋れし庭かたち   一 稱
はつ秋やよく寐(ね)てけさは未た早き   完 鴎
文字の声や心のあらたまり   凉 花
隠れ家やおもひもよらぬ門礼者   喜 山
好きらひ聞かて出しけり屠蘇(とそ)の酒   素 心
夕かほや月の入るまて高咄(たかばな)し   麦 露
漕(こぎ)出して右左なし月の船   渓 齋
はるの日や硯(すずり)のへりに蠅(はえ)の来る   只 有
蛤(はまぐり)や時の果報の敷まつ葉   大 夢
とり巻て咲や祠(ほこら)は梅の神   柳 壷
はつ蛙鳴や野を行月夜の灯   丹 嶺
みこもらぬ雀少なき日和かな   恁 平
なつかしや山またやまの遠きぬた   慶 里
詠(ながめ)やるこゝろ老けり紅のはな   市 猿
月見へて暮もいそかぬ柳かな   柳 皐
野の萱(かや)もそよく風なき月夜哉(かな)   習 静
元日や海と空との色ふかし   古 棠
羽遣(はづか)ひも軽し若葉に遊ふ鳥   李 朗
後れ来てひとり念入る御慶哉(かな)   文 帯
けふの月雲の居ところ尋ねけり   文 貞
青柳の影に澄きる田水かな   青 花
坐(ざ)敷まて終(つい)に来馴(なれ)て雀の子   律 正
さし汐(しお)の戦(そよ)きかゝるや若みとり   かすミ
若水やうれしきまゝの汲(くみ)いそき   五 具
田から立風もかすむや麦の上   鷺 眠
あら磯のものとおもはぬ白魚哉(かな)   渭 川
いねつむや梅ある窓を枕(まくら)もと   龍 潮
花に来て音なくなりぬ松の風   雲 底
ちきれ雲行やいつこの初しくれ   淡 處
文字(せみ)鳴や干かけてあるさらし布   省 我
元日や巨燵(こたつ)はなれし福寿草   其 残
山笑ふ頃や朝茶も味のよき   嵐 松
屑とて□ひと籠もあ□早苗哉   □ □
風まてか来てすゝしさや湊(みなと)□   未 貫
朝(あさ)顔に気は澄しけり神詣(もうで)   成 章

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