須賀川市立博物館図録 俳諧摺 上 -101/113page

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渋ぬりのあとなかりけり藤はかま   栄 傾
朝雨をふしにふくみてつくつくし   旭 齋
明る夜の匂ひみちけり春の水   月 杵
黄鳥(うぐいす)も薮(やぶ)に啼(なく)日の袷(あわせ)かな   可 候
汐寂(しおさひ)の木々の中なり桃の花   季 成
蒔(まき)水も乾きて秋立にけり   喜 年
紫の露もあら野のすみれ哉(かな)   有 舎
薄雲と桜は中のよかりけり   保久賀
ひとまつはさやかに出(い)つはるの月   西 翁
水仙にしはしたもつや日の暖み   他 山
気の付て見る露清しけさの秋   香 雪
軒ちかく鳥囀(さえず)るや朝な朝な   清 民
文字(さかずき)をとらぬ日もなし梅の花   壮 山
雉子(きじ)鳴て行先みゆる夜明哉(かな)   多よめ
浪(なみ)音を遠く見返る暑かな   一 止
青麦や忘れし雨も待こゝろ   江 三
あらそはぬ空と水とやはるの海   布 山
朝夕となく見廻るや稲の花   盤 齋
遠くから来た声てなし初鴉(からす)   松 圃
茶の花の咲て明るし畑つゝき   峰 秀
古根からしらぬ草まて萌(もえ)にけり   葱 玉
すゝしさに相手もいらぬ草家かな   素 山
湖に入込畑やもゝの花   江 春
雪もふむ身拵(みごしら)ひして小松曳(ひき)   碧 水
白露も香にたつものそ八重葎(むくら)   静 渕
屠蘇(とそ)の醉をかし終日(ひねもす)朝こゝろ   御 風
裏町ははや遊はれてうめの花   卓 郎
紅うらの着もの吹すや春の風   思 楽
はつ秋や雛(ひな)もましりて都鳥   春 湖
門ちさく入て中々梅はやし   苣 麿
初かはつ田水流るゝ音もなし   黙 平
空向て枝新らしき野梅かな   文字 暁
旅人のものにして見る野梅かな   宇 山
鳴ころとおもふ夜になる蛙かな   乙 五
打出せはおなし匂ひや芹薺(せりなずな)   幽 止
花うつす水や涼しき物に見る   尋 香
軽く来る風のゆとりや花の色   桐 齋
御降(おさがり)やつらりとならふ宮の鳥   皿 子
植上けてさゝ波つくる田面かな   由 地
明てある夜をうかれけり虫の声   月 茶
星きらきら汲(くむ)若水にゆれにけり   葎 露
卯(う)の花やいつか温泉宿(ゆやど)の夕ともし   甫 柳
やまやまのみとりひかへてはるの鳥   草 友
四五十歩通り過して梅ひと木   北 露
人住は島根山根もうめのはな   太 年
残されて梅は咲なりひらき畑   貫 乎
梅咲て宿にもいたし出も出たし   波 文字
苗代やけふは水さへ見へぬほと   如 白
蚕飼へは夜空も覗(のぞ)くならひ哉(かな)   新 甫
音もふりも春のかろみや百千鳥(ももちどり)   きく雄
はつ夢は見ねと寐覚(ねざめ)に福寿草   五 休
ひとわたり野をほのめかす霞哉(かすみかな)   花 外
雨気もつかねや雉子啼桐(きじなくきり)はたけ   卜 早
また雪のふりなからやいかのほり   皷 汀
水底もかすむと見るやうつる空   稔 郎
番(つが)ひとはおもひもつかす鳴水文字(くいな)   見 外
花の原たゝうつくしと見て過ぬ   香 暁
隣からとなりへうつる梅見かな   ミき雄
わか草や月もよい夜になりすまし   蘆 城
ひきかへて此(この)しつまりや花に鐘   草 栖
寐(ね)ぬ事にきめてかりけり梅の宿   甘 志
若水や柳を潜(くぐ)る汲(くみ)こゝろ   永 年
足る程に茂るを鉢の楓(かえで)かな   素 a
はつ手水(ちょうず)こゝろの皺(しわ)ものひにけり   甘 茶
さす汐(しお)のたゝへて鳰(にお)の浮巣哉(かな)   香 城
ともからみする朝顔や最合垣(もやいがき)   不 染
翌の用すゝしき胸にうかひけり   普 陽
鞠羽子(まりはね)やそれも優美な田舎ふり   羽 人
何鳥か寝た影丸し月の梅   可 尊
戸明れは高き日あしや時鳥(ほととぎす)   奇 泉
手ちかくの梅つまみ込雑煮かな   永 機
後になり先に成行花見かな   芳 泉
春の日や我にも添はぬわか心   鶯 室
売るほとにつはな揃(そろ)へぬ時処(ところ)   存 長
暮遅し水にほんやり月のある   小 雲
曙やまたわすれすになく蛙   留 木

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