須賀川市立博物館図録 俳諧摺 上 -103/113page

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  また新たに二才の春を迎ふ
うつし見ることしの空や宮戸川   露 心
  旧瓦書  印
 

27 晴霞仏(多代)追悼摺

  辞 世
終の世はまくらも上す四日月 晴霞佛
  光りのゝこる草の葉の露   桃 丘
なめすゝきとる間に釜の水さして   清 民
  返事ひとつを又きゝに遣(や)る 曾孫(ひこ) せん女
火振にもふかき朧(おぼろ)やかゝるらん 晴 山
  朔日(ついたち)いはふ春の蔵元 曾孫(ひこ) 旧 池
    下 略
  諸君所賜の玉章皆前文有其長短悼み深切也(なり)
  前文なくては句意通せす然れは祝しかたきもの 
  なりされと紙上にかきりあれは遺憾ながら前書
  を省き侍(はべ)る寛恕(かんじょ)見ゆるし給(たま)へと告す
 
おもひやる空のかきりや四日月 武蔵 為 山
見る人のひとり成けり秋の月   春 湖
もとの木に帰りやうなし風の露   氷 壷
待は来て本意(ほい)なき雁(かり)の便かな   等 栽
稲に風たしかな果をきく夜哉(かな)   芳 草
したはしき日頃成けり露しくれ   荷 少
枯萩(はぎ)の匂ひもさそな信夫山   木 和
露寒やよみし手紙を膝(ひざ)の上   きく雄
人の袖(そで)ぬらすや折し女郎花(おみなえし)   甘 茶
みちのくの秋風今や身にしみぬ   三支雄
入月やさてもむかしの軒の栗   大 虫
月の萩ちりしあとまて芳はしき   鳳 雛
月は入はてゝ身にしむ夜かけかな   文字 美
たよりなや秋をしくるゝ葱(しのぶ)草   五 休
菊もみち花ちる忌日忌日かな   五 渡
留主(るす)の間に名の木散けりても扨(さて)も 上毛 白 亥
初手からのこと先立て袖(そで)の露 下毛 其 翼
常ならぬ便きく夜や荻(おぎ)の声 常陸 鶴 巣
こほれても残れる露の光り哉   谷 明
このもしきうしろすかたや月を友 加賀 大 夢
ゆく人も月も西なり影法師 越後 雅 佛
秋風やおもひまうけぬ此ゆふへ 信濃 春 海
をしまるゝ夜のはしめ也(なり)三日月 出羽 素 山
便なきたよりの淡し露の秋   二 葉
膝(ひざ)折て聞直しても秋の声   江 春
散る花は老木もおなし名残かな   桜 山
世の人にしらなて散し芙蓉(ふよう)かな   文字 風
みか月も見はてゝけふの仏かな 尾張 梅 裡
おもむきを残して菊の枯にけり   我 亮
もう見えぬ月の更ゆく雲いく重   武 貫
かれてさへ香は玉なすや池の蓮(はす)   如 文字
吹暮た夜も秋風の光りかな   静 處
夕かすみあたら栖(すみか)のかくれけり   士 前
穂すゝきや風に散ゆく九十九髪(つくもがみ) 近江 乙 也
破るまてうるはしかりしはせをかな 黙 池
さひしさの旅またかなし秋の暮   赤 甫
おもはさるたより聞夜の時雨かな   東 樹
何やらかさひしくなりぬ露時雨   兎 尺
此世より月清からん君か旅   公 成
この道やゆく人出来ぬ秋の月 阿波 萬 像
見馴たる花野の花や手向草(たむけぐさ) 函館 葱 玉
翌日(あす)を期す枕とせしか三日の影 松前 風 逸
かをるほと猶(なお)をしまれて月の梅 江差 一 文字
芋の子や徳に報ゆる手向もの 安達 児 川
名月もかきりのありて西へ入   丁 酉
いたゝきし筆にも柿を手向かな 安積 隣 々
柿の蔕(へた)ともにちからもぬけにけり   黙 斎
露の玉こほれて草の動きけり   松 月
菊の香を残して秋は暮にけり 白川 素 磴
吹はつとおもへとかなし秋の風 会津 梅 渓
俤(おもかげ)の添うて露散あしたかな   湖 山
晩鐘は常にもあれと秋の暮   松 甫
をしまれて朽ぬ名なれや菊の花   布 山
宵月も入て俄(にわか)に夜寒かな 信夫 袋 蜘
とり付てむしも鳴也(なり)草の露 伊達 冨 山

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